氷河期40万人「ひきこもり」支援の切実な現場

実社会との「溝」を埋めれば活躍の場はある

RPGにいそしむ(写真:NPO法人侍学園スクオーラ・今人)

不登校経験者やひきこもりの人が多いRPGナイト。普段は人と接する機会が少ない人々の集まりだが、ここには会話がなくとも確実に「他者」がいる。お菓子や飲み物、コントローラーを隣の人に回すありきたりな場面にも何気ない気遣い、声掛けが生まれている。

「ひきこもりのゲーム好きというと、世間からは『周囲と接点を持たず、自分の世界にだけ籠もっている人』と見られてしまいがち。だけど彼らは体験や感動を共有したいと思っているのではないか。ゲームをしにきているという名目の下で、実は彼らは周囲とコミュニケーションを取りたがっているのだと思う」(藤井さん)。

1本1000円の動画編集からスタート

ひきこもり支援というと、多くのビジネスパーソンが送っているような日常の「型」に、当人をどう近づけるかが課題とされてきた。朝起きて、満員電車に乗って出勤し、日中は働き、帰宅して夜には寝るというもの。だが、あらゆる職域でIT化が進み、それに応じた働き方改革も進んでいる現代では、従来の型に当てはめるだけが解決策ではなくなっている。

不登校やひきこもりを経験した東京都内在住の女性Aさん(23歳)は今、自宅で動画の編集をしながら収入を得ている。クライアントから依頼された動画にテロップや効果音、BGMを入れる編集作業を1本こなすごとに1000円の収入を得る。

「もともと周囲のペースについていけないところがあったんです。今、自分がやるべきことの意味を理解し、どう動けばいいのかを判断して実際に動き出すまで周りの人より多くの時間を要していました。高校3年になって周囲が受験モードに突入していくと、ついに学校に行けなくなってしまいました」(Aさん)

Aさんには、精神的に追い詰められると眠ってしまうという体質があった。緊張するとあくびが出る人は一定数いるが、Aさんの場合はストンと眠りに落ちてしまう。授業についていけず眠ってしまうAさんの姿は、教師や周囲の目に「緊張感がない」「真剣に考えていない」と映ってしまっていた。実際はその逆であるにもかかわらず、理解されなかった。

「家を出て最寄り駅までは歩いていけても電車に乗れない。駅のホームにあるトイレに入っていき、授業が終わる時間まで籠もっていたこともありました」(Aさん)。

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