氷河期40万人「ひきこもり」支援の切実な現場 実社会との「溝」を埋めれば活躍の場はある

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働き続けることができればスキルが上がっていく。キッティングからスタートし、ワンランク難しいネットワークの保守点検、さらに難易度が高いサーバー構築やアプリ開発までこなせるようになった人が、同社では活躍している。

やり遂げたという経験

法人向けIT人材派遣会社に勤務しているBさん(33歳)。2011年に教育系大学を卒業し、しばらく就職活動を続けていたが、家庭環境の悪化がきっかけで家にひきこもるようになる。生き甲斐だったバンド活動も休止し、メンタルクリニックにも通い始めた。道が拓けたのは、育て上げネットの「ジョブトレIT」を受講したことだった。

育て上げネットで、ビル清掃やチラシの折り込み作業など実社会で働くためのトレーニングを積んだが、大きな経験になったのはチームで1つのプログラム開発を成し遂げたことだった。プログラミングの基礎を学べたというだけでなく「自分たちで何かをやりとげたという経験が大きな糧になった」(Bさん)という。

インターン行きを決意するまでには「数カ月かかった」と苦笑いする。背中を押してくれたのは育て上げネットスタッフの平松あす実さんの一言だった。「もし上手くいかなかったら、またチャレンジすればいい」。

インターン訪問した企業で働き始めて3年が過ぎた。今では後輩たちの悩みの「聞き役」になることも多い。適切な対応ができる支援団体や企業のサポート、そして本人の意思。ひきこもり経験者が実社会に出ていくには様々の人々の助けが必要だ。うまくいけば、ひきこもりを経験してきた人ならではの存在感を発揮しうるだろう。

『週刊東洋経済』1月25日号(1月20日発売)の特集は「『氷河期』を救え!」です。
野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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