当時の経済産業省によるクリエーティブ・オフィスの提言資料を参照すると、1. 通常の執務席 、2. 個人の集中スペース、3.ワークショップできるスペース、 4. ブレーンストーミングのアイデア出しスペース、 5. 社員の交流を産むスペースなどの種類の場所が設計されることが多いようです。
クリエーティブ・オフィスはオフィス仕様という視点ですが、昨今では「人」を中心とした見方、人が働く内容から環境を考える視点が出てきています。それが「アクティビティ・ベースド・ワーキング(Activity Based Working=ABW)」という考え方です。
活動内容によって部屋を「変える」
ABWとは、それぞれの活動内容に基づいて、最適な場所を選んで仕事をするというものです。
例えば、アイデア出しであればソファでリラックスしながら行ったり、数字をまとめるなど1人で作業に集中したいときは他人の視線にも邪魔されない静かな小部屋にこもったり、多数で議論をしたいときには開放的で大きなホワイトボードのある明るい部屋といった具合に、その活動が最も効率的にはかどる場所を選んで仕事をすることです。トヨタのTRI-ADの例はまさにABWの実践例といえるでしょう。
ABWによって社員の生産性が上がることも報告されています。例えば、三井デザインテック「ABWに関する調査研究」では、東京都内の企業に勤める社員を対象に、オフィスのレイアウトを①ABW、②固定席、③両者を折衷した固定席型ABW、④単純フリーアドレスの4つに分類、仕事へのエンゲージメント、パフォーマンスなどとの相関関係を検証しました。
すると、ABWを取り入れた①と③タイプのオフィスで働く社員がいずれも高い数値を示したということです。
実際、用途別に設備が整ったシェアオフィスやコワーキングスペースを、オフィスとして提供する企業も増えています。コーナーストーンオンデマンド日本法人が入居するWeWorkでは、大きなソファやおしゃれな家具がゆとりをもって配置され、音楽も流れているエリアがあります。すべての入居企業との共用スペースですが、ゆったりできるソファで、リラックスして仕事ができます。
また、ボックス形式のデスクや、長いベンチチェアのフリースペースが、形を変えてたくさん用意されており、ちょっとした打ち合わせに自由に使えるようになっていてとても便利です。電話会議用の小さいブースもあります。自社オフィスの執務スペースだけでなく、共用部分にこのように用途に特化したスペースがあることで、それぞれが仕事の内容に最適な場所で執務しています。
ここで働いていてとくに思うのですが、場所を変えて仕事ができることは、アクティビティ・ベースという意味での効率性だけでなく、気分転換の意味でもとても効果的で、結果として一つひとつの仕事により集中できる、という好循環が生まれています。
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