積水ハウスが今、アメリカ事業を強化する理由 「CES出展・MITとの共同研究」の動きがある

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背景には、あくまでざっくりとした数字だが、住宅内での脳卒中、心疾患、溺死、転倒・転落による死亡者数は年間約7万人に上るといわれている。交通事故による死亡者数はエアバッグの普及などにより3500人程度で推移しているのと比べると、その多さがよくわかる。

脳卒中の発症数は年間約29万人で、うち79%が住宅内で発症している、という報告もある。また、それは長い目で見れば国や国民の介護負担、介護離職の増大なども引き起こし、社会に悪影響を及ぼしているとされている。ただ、発症から約4時間の患者であれば有効な治療法があるともされている。要するに、いかに早期発見し治療するかが、その後の状況改善への重要なカギとなり、それは住まいの分野における長年の課題でもあった。

現地で積水ハウスの仲井嘉浩社長は、「このシステムの確立・普及により、住宅内での死亡事故のほか、要介護者の発生も減らし、『家が健康を作り出せるようになる』と考えている。また、世界で最も高齢化率が高いわが国だけではなく、高齢化問題は近未来の世界における課題でもあり、貢献度が大きい」と語っている。

つまり、日本の現状の改善だけでなく、世界的な状況を見据え、「HED-Net」を開発しているのである。そして、世界により効果的に情報発信、普及することを狙って、アメリカのCESという場を選択したのだ。

非接触型センサーの検知精度向上がカギ

開発成功のカギは、非接触型センサーによる検知手法の確立と精度の向上にある。近年、ウエアラブルセンサーにより居住者のバイタルデータを検知するシステムが普及し始めているが、居住者にストレスを与えるため、実効性の高いものになっていないのが現状だ。

積水ハウスの展示ブースの様子(筆者撮影)

ただ、非接触型にもデメリットがある。住まいの中にはセンサーの検知を難しくするさまざまな状況があり、例えば布団をかぶっている、寝返りを打つなどといったことで、検知データが大きく変わってしまいやすいからだ。

そうなると、居住者が脳卒中になっていない場合でも、異常の状態をセンサーが検知してしまう。そこで、異常を正確に検知するために重要となるのが、アルゴリズムの開発だ。

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