選挙ポスター公費請求「水増し」もありうる欠陥 専門家「厳しい目を注ぎ実態浮き彫りにせよ」
安野助教が続ける。
「公職選挙法は立候補の機会均等や選挙運動の機会均等などを目的に、選挙ポスターやビラ、ガソリン、看板などの代金を公費で賄っています。けれども、それらは法定得票率に達した候補者のみが恩恵に浴する限定的なものです。供託金も法定得票率を得た候補には返還されますが、達しなかった候補は没収されます。
つまり、現行の公費負担制度は『地盤』『看板』『カバン』を持っている候補に手厚く、持たざる者に冷たい仕組みなのです。立候補や選挙運動の機会均等は有名無実です」
そうした視点からは、選挙ポスターをめぐる「4~5倍近い請求金額差」はどう映るのか。
「今の仕組みは持っている候補を優遇するだけではありません。(候補者とその発注先は結託すれば、ポスターの単価を実勢価格よりも高くするなど)水増し請求なども可能です。今の仕組みを点検すればするほど、制度悪用の余地を与えているといった思いを強くします」
業者からの資金還流 「完全防止には法改正を」
「政治資金オンブズマン」共同代表で神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏は、受注業者から候補者に政治資金として還流(キックバック)される恐れがないかどうかを注視している。
「こうした不正を許さないためには、公選法と政治資金規正法を改正する必要があります。公選法では、候補者に寄付をしたりパーティー券を買ったりした業者にはポスター印刷を委託できないことを定める。
政治資金規正法では、候補者からポスター印刷を受注した業者は、その候補者側に寄付したりパーティー券を買ったりすることなどを禁止する。実際に不正や不祥事などが発覚しないと、なかなか制度見直しの動きが出ませんから、さらに厳しい目を注いで、選挙の実態を浮き彫りにしなければなりません」
ポスター1枚当たりの単価の上限額や印刷枚数の上限にも、問題は潜んでいると上脇氏は言う。
「候補者と業者が話し合って、高い単価を意図的に設定してはいないか。現状は不透明です。印刷枚数にしても、本当に請求どおりの枚数を刷ったのか。そうした事実を各選管は確認しないシステムになっています。そもそも公設掲示板の2倍と定められた上限枚数が、適切と言えるのかどうか。法改正などを通じて透明化を図るべきでしょう」
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