「史上最長政権」でも首相の表情が晴れない理由 「桜を見る会」疑惑で浮上する「桜解散」説

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11月15日夜、桜を見る会問題に関連し、記者団の質問に答える安倍晋三首相(写真:時事通信)

安倍晋三首相が11月20日、通算在任記録(桂太郎首相の2886日)を更新した。政治史に燦然と輝く大宰相の勲章にもかかわらず、首相の笑顔はぎこちない。突如浮上した「桜を見る会」の私物化疑惑が原因だ。

ここ数日、メディアへの釈明に追われる安倍首相の表情には、想定外の政治的危機への戸惑いと焦りがにじみ出ている。首相サイドには「こうなれば桜解散だ」と来年1~2月の衆院解散・総選挙での局面打開を狙う強気の声もあるが、内閣支持率が低下し、安倍バッシングが加速すれば「解散どころか死に体化が進みかねない」(細田派幹部)との不安も浮上している。

桜を見る会「私物化批判」が大炎上

桜を見る会は、長年にわたり、歴代首相がそれぞれ毎年4月に新宿御苑で主催してきた。政財官界幹部や各国大公使のほか、芸能・スポーツ界の有名人も招き、満開の八重桜などを愛でながら首相夫妻が各界の功労・功績者等を接遇する、政界の春の風物詩として定着してきた。多くのメディア幹部も招待され、税金を使っての開催も「マスコミ公認」(自民幹部)とされてきた。

この状況が一変したのは、11月8日の参院予算委員会で共産党の追及をきっかけに、野党や国民の間で「私物化批判」が大炎上したからだ。確かに、今年4月の開催実績でみると、功労・功績者等に交じって、安倍首相の地元・山口県から850人もの支援者が招待され、当日朝の開催時間の前に17台のバスに分乗して会場に先に入り、首相夫妻もグループ別に記念写真撮影に応じていた。

この「安倍首相ご一行様」は、安倍事務所の参加者募集に応じた地元後援会のメンバーが大半とされる。しかも、ほとんどの人々が開催前日、都心の高級ホテルでの前夜祭にも参加し、首相夫妻を囲んで歓談していたことが首相動静にも記録されていた。このため、野党からは「あからさまな選挙対策で、明確な公職選挙法違反」(立憲民主党幹部)との批判が噴出し、ワイドショーなどで安倍首相のスキャンダルとして大きく取り上げられた。

8日の国会答弁では「私は招待者の取りまとめなどには関与していない」と冷静さを装った安倍首相だが、批判の高まりを受けて菅義偉官房長官とも協議。13日に「来年の開催を中止して運営方法見直す」ことを発表した。

さらに、15日には首相自身が首相番記者の取材に応じ、「すべての費用は参加者の自己負担で、事務所・後援会の収入・支出は一切ない」と釈明。そのうえで、「招待人数が多くなってきたことは反省しなければならない」などと、約20分間にもわたって事情を説明した。

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