「史上最長政権」でも首相の表情が晴れない理由 「桜を見る会」疑惑で浮上する「桜解散」説

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確かに、野党などが指摘する公選法・政治資金規正法違反の明確な証拠はない。問題となっている交通・宿泊費や前夜祭の会費も、「すべて招待者が負担し、ツアーを企画した旅行会社やホテル側とも、事務所のサポートで直接支払い、領収書も受け取っている」(安倍事務所)のが事実なら、「違法性はない」(同)ことになる。だからこそ首相も、事務所に確認した話として、弁護士にも相談したうえで異例の詳細説明に踏み切ったとされる。

しかし、野党側は「首相の説明は火に油を注いだようなもの」(立憲民主幹部)と勢いづいている。そもそも、「850人もの地元支援者を招いたのは、開催趣旨を逸脱しており、歴代首相と比較しても安倍首相による私物化が突出している」(国民民主党幹部)ことは否定できない。しかも、高級ホテルでの前夜祭も、立食パーティとはいえ「1人5000円は超格安」(業界関係者)との指摘も相次ぐ。

前夜祭の明細書は「存在しない」

首相は「ほとんどの人が同じホテルに宿泊することもあって、ホテル側が設定した価格だ」と説明しているが、「通常のセット料金の半額以下となれば、ホテル側の首相への過度の忖度としかみえない」(他ホテル担当者)との声も噴き出す。さらに、前夜祭の会場では安倍事務所側が会費5000円を徴収し、ホテルの領収書を渡していたことも疑惑の対象となった。

前夜祭の運営などについて、司法関係者は「事前に事務所からの支払いがなければ、ホテル側が領収書を出すことは想定しにくい。もし、事務所とホテル側に別途の金銭のやり取りがあれば、結果的に全額参加者負担だったとしても、政治資金収支報告書への記載義務が生じる」と指摘する。

週明けの18日に安倍首相は、「事務所にも後援会にも入金は一切ないので、(事務所などから)領収書も発行していない」と違法でないことを改めて力説した。ただ、証拠となる前夜祭の参加者数や総額を記した明細書の存否を問われると、「事務所に確認しているが、そうしたものはないということだ」と答えた。

この説明に対して野党側の追及の先頭に立つ安住淳・立憲民主党国対委員長は18日、「明細書も作らずにパーティを開催するなんて、戦後聞いたことがない」と大げさな表現で疑惑を指摘。野党側も同日「首相の後援会が懇親会を主催したのなら、政治資金収支報告書への記載は必要」との認識で一致し、与党側に①予算委員会の集中審議開催、②今週開催の衆院内閣委への、安倍事務所の会計責任者と前夜祭を開催したホテルの担当者の参考人招致を要求した。

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