経営危機の「女子校」を一変させた校長の手腕 武蔵野大学中学・高校を変えた「日野田直彦」

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任期満了のあと1年延長し、箕面高校の校長は2018年3月末で退任することが決まっていた。その後はシンガポールで大きな仕事のオファーやほかの学校からの引き合いもあった。そのような中、日野田校長のもとへ何度も足を運び、学校教育にかける思いを語ったのが、学校法人武蔵野大学の関係者だった。

「三顧の礼で来られて、助けてほしい、と言われました。教育はお金ではなく、想いでしか変えられないという信念があります。ですから、お手伝させていただきます、経営的に厳しいなら給料もギリギリでいいです、と」

初めて住む東京の事情を知るためにもいい機会だと考えた。

「この学校は“閉鎖直前”ともいえるほど厳しい状況でした。しかし、日本では第2次ベビーブーム期には約210万人だった出生数が、2019年には86万4000人まで落ち込んでいます。将来、私学の半分がつぶれるという予測もある中で、みんなが絶対に立て直しは無理だと思うようなところでこそ、再生モデルを作ったほうが興味深いですし、社会的にも貢献できると考えました」。

日野田校長は教育の改革者として捉えられることが多いが、自身は「改革」という言葉は好んで使わない。何事にもいい面と悪い面があるのは当然で、日本の教育システムにしても、武蔵野大学中高にしても、これまでの取り組みを全否定するつもりはなく、いい面は残す。しかし、ただ長年の流れや慣習だけで、とくに意味や成果もなく続けられているようなことには、前例にとらわれずやめることが大事だと考えている。

Small Start, Big Scale

武蔵野大学の学祖である高楠順次郎はイギリス・オックスフォード大をはじめ、ドイツやフランスにも留学した人物。国際的な仏教学者として知られるが、20代のころは西本願寺が創設した学校で同志を集めて禁酒運動を行い、後の『中央公論』となる『反省会雑誌』を刊行した。

「経歴だけ見ても面白いし、社会に足りないもの、必要とされるものは何かを見て、実践していた方。そんな学祖の精神がベースにある学校だから、苦しい状況になってしまったのは何かボタンの掛け違えがあっただけ。“学祖がもし今の時代に生まれ変わったら何をするのか?”、先生方と考え続け、少しずつ変えていっています」。

とはいえ、パラシュートで突然、最前線に降りていったような学校で物事を変えていくのは、相当、大変ではなかったかと想像する。しかし日野田校長の手法は、箕面高校においても、武蔵野大学中高においても「Small Start, Big Scale」。

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