経営危機の「女子校」を一変させた校長の手腕 武蔵野大学中学・高校を変えた「日野田直彦」

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「学校の主人公は、生徒。僕ら教職員は、刺し身のつまのようなもの。失敗する子がいちばん偉い。教員は挑戦と失敗を応援する。失敗や矛盾を楽しめる子になってほしい、と思っています。生徒たち自身がオーナーシップを持ち、あちらこちらで“ゲリラ戦”を展開するのを狙っている」。

実際、校内ではブレインストーミングやマインドマップを書くのが当たり前になりつつある。自分から意見を“とりあえず言ってみる”雰囲気になってきたため、最近では生徒から、アメリカの高校でよく開かれているプロム(卒業式の際に行われるダンスパーティー)をやりたい、という声まであがった。教員からのアイデアで、3月には職員室内にカフェラウンジも設置される。そういうことを言えるような雰囲気になってきたのがうれしいという。

海軍ではなく海賊になる

スティーブ・ジョブズの“海軍ではなく海賊になる”という言葉を好んで使う。「変化の激しい時代だから、大きな母体(船)を造ってもあっという間に沈んでしまう。そうではなくプロジェクトベースで集まって終わったら解散、というスタイルでトライ&エラーを繰り返し、フィードバックをもらうほうがはるかに成果は出る」。

日野田直彦(ひのだ なおひこ):武蔵野大学中学校・高等学校校長。1977年生まれ。帰国子女。帰国後、同志社国際中学・高校に入学。同志社大学卒業後、馬渕教室入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任。着任後、全国の公立学校で最年少(36歳)の校長として改革を推進。着任3年目には海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。著書に『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』(IBCパブリッシング)。2018年より現職(筆者撮影)

昨年の夏には、箕面高校時代にタクトピア株式会社と共同開発した「アントレプレナーシップ(起業精神)」の研修をベースに、MIT(マサチューセッツ工科大学)で行う海外研修プログラムを武蔵野大学中学・高校にも導入した。

「語学研修ではないのです。MITには自分は世界を変えられるって勘違いしているような人間がいっぱいいるからMITに行っているだけ。世界トップの教授たちや、起業家に来てもらって、超パッショナブルな話を聞きまくる。ポイントは、その人がどれだけの世界観と哲学を持って仕事に取り組んでいるかを語ってもらい、大いにインスパイアされること。

そんな人たちと同じ空気を吸うって大事ですよね。そうすれば、英語を学ぼう、もっと伝えたい、この人たちと一緒に戦ってみたい、と動き出してくれる子が出てきます。学習の根源は、“モチベーション”。自ら気づき、行動したいと思った時に学習効果は最大化されると思います」。

こうして成長した“海賊たち”がそれぞれの場所で大暴れし、やがて世界が変わっていくこと――。それこそが日野田校長の仕掛ける教育だ。

吉岡 名保恵 ライター/エディター

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よしおか なおえ / Naoe Yoshioka

1975年和歌山県生まれ。同志社大学を卒業後、地方紙記者を経て現在はフリーのライター/エディターとして活動。2023年から東洋経済オンライン編集部に所属。大学時代にグライダー(滑空機)を始め、(公社)日本滑空協会の機関誌で編集長も務めている。

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