経営危機の「女子校」を一変させた校長の手腕 武蔵野大学中学・高校を変えた「日野田直彦」

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たまたま共学化のタイミングと、日野田校長の着任が重なったこともあり、校内の雰囲気は一変した。着任から1年後、23区から通う入学者も大幅に増え、2019年の中学入学者は前年度の62人から138人に倍増。これまで1回当たり50人程度だった学校説明会に、現在では1200人を超える参加者が殺到している。「学校説明会がパンクしそう」とうれしい悲鳴だ。

生徒たちは日野田校長のことを「直(なお)さん」と呼び、何かあれば校長室を訪ねてくる。あるとき、中1の生徒がこんなことを提案してきた。「直さん、教育系のイベントっていっぱいあるけれど、おじさん、おばさんばっかりがしゃべって、聞いているのもおじさん、おばさんばかり。どうして教育を受けているわれわれ生徒が出られないんですか」。

そこまで言うならやってみたら、と用意された舞台は2019年11月、東京都内で行われた「Edvation × Summit2019~経産省「未来の教室」実証事業中間報告~」。

武蔵野大学中学は同事業の実証校として、一人ひとりにカスタマイズされたタブレット型AI教材「atama+(アタマプラス)」を中1の数学に取り入れている。各校の報告が続く中、同校だけは唯一、実際に授業を受けている当事者として中1の生徒2人が登壇した。

生徒が学校説明会をハックしたいと・・・

「事前の仕込みは嫌いなので、生徒には何でもいいから好きにしゃべれ、と。大人は忖度(そんたく)しちゃうけれど、生徒のほうが正確なフィードバックをしますよ。経済産業省やBCG(ボストン コンサルティング グループ:「未来の教室」(学びの場)創出事業を受託している株式会社)のお偉いさんもいる前で、実際、悪いことも含めて堂々と話していました。会場は引いていたかもしれませんが」。

壁一面のホワイトボードは日野田校長着任後に設置された。写真は英語と国語の教員が一緒に授業を担当する「言語活動」の授業で、自分の考えを書き込む中学1年生の様子。「言語活動」は昨年から中学校でスタートした同校オリジナルの授業で、教科の枠を超えて言語の4技能を伸ばすのが目的だ(写真:同校提供)

またあるときは、生徒たちが学校説明会をハックしたいと言い出した。

「じゃあどうぞ、ってやらせてみたら、大失敗。プレゼンテーションはうまくいきましたけれど、体験授業がボロボロで。そのあと生徒が校長室に来て言うんです。

直さん、今まで授業が面白くない先生の悪口を言っていたけれど、授業って10分やるのも大変なんですね、って。

それで今では、つまらないと文句を言うのではなく、授業をサポートする存在になりたいと思います、と言うようになりました。何事も“誰かのせい”にすることなく、自ら学び、自ら行動し、失敗から学び続けること。そして、このようにオーナーシップを持つことこそが、本来学校で学ぶべきことではないでしょうか」。

校則についても生徒で話し合って決めるよう、促している。ただし多数決は禁止。「コンサバの人もリベラルな人もいる。根回しして頑張れ、って全部、生徒に投げています。多数決は数に任せた暴力に近い。よく話し合ってみんなが『7割満足3割不満』まで持っていってくださいね、と」。

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