新国立競技場はサッカーの「真の聖地」になるのか ピッチの遠さやゴール裏の設計などにも課題
しかしながら、2002年日韓ワールドカップを契機に4万~5万人規模のスタジアムが次々と作られた。関東エリアだけでも埼玉や鹿島という2つの球技専用があり、日産と味の素スタジアム(東京都調布市)も陸上兼用だが代表戦開催実績は少なくない。
2万人規模ならフクダ電子アリーナ(千葉市)やNACK5スタジアム大宮(さいたま市)、等々力陸上競技場(神奈川県川崎市)もあって、協会がどこを使うか選択に困るほどだ。
全国に視野を広げれば豊田、吹田、神戸というサッカー日本代表戦常連の専用スタジアムがあるし、「2002年のレガシーを有効活用する」という意味で、札幌ドームや新潟・デンカビッグスワンスタジアム、宮城・ひとめぼれスタジアム、静岡・エコパスタジアム、大分・昭和電工ドームでも数年に1度は代表戦を実施している。これだけ熾烈な競争の中に新国立が入り込む余地はあるのか。
「2023年の女子ワールドカップ招致に手を挙げていますから、ぜひ使いたい」と田嶋会長は前向きに語ったが、そういう巨大国際大会を呼ばない限り、新国立が使われる機会は少なそうだ。
一方、Jリーグは「ルヴァンやゼロックスはおそらく来年以降、新国立に戻ると思います」と関係者が言うように、まだ可能性は高いようだ。東京都心にあり、JRの千駄ケ谷、代々木、信濃町、大江戸線の国立競技場、銀座線の外苑前という5駅を使える利便性は非常に大きな強み。そこが重視されれば、サッカーはもちろんのこと、コンサートなどのイベント開催は見込めるだろう。
新国立競技場が「聖地」となるために
そこで気になるのが施設利用料だ。東京オリパラ終了後の利用開始時期や利用料金などは現在検討中となっているが、総工費1600億円、年間維持費24億円とされる新国立の場合、使用料も高額になる可能性が高い。
指定管理者も決まっておらず、後利用の方向性が見えていないため、現状のままでは各関係団体も二の足を踏むだろう。せっかく最新鋭のスタジアムを作っても稼働率が上がらなければ「負の遺産」になることも考えられる。
新国立に先駆けて東京五輪のために作られた海の森水上競技場やカヌー・スラロームセンターなどが赤字を計上する見込みになっているだけに、どうすれば新たな聖地が最大限有効活用されるようになるのか。当初議論されていた大会後のトラック撤去、8万人規模の球技専用スタジアム化も視野に入れつつ、入念に検討を重ねていってほしいものだ。
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