新国立競技場はサッカーの「真の聖地」になるのか ピッチの遠さやゴール裏の設計などにも課題
メディア入り口は外苑側。そこから建物内まではスタジアム外周の約4分の1の距離を歩くことになった。やっとの思いで中に入り、2階のメディアルームの扉を開けるとさすがは五輪仕様。十分な広さが確保されていた。

縦長のスペースでやや使いにくそうだったが、真新しいデスクが並び、通信環境も整備されるなど2014年までの旧国立とは比べ物にならないほど快適だった。地下1階の記者会見場は臨時で会議室があてがわれたため狭く、ミックスゾーンは逆にかなり広い。
記者席はメディアルームから階段を上ってすぐの1階メイン側中央だが、これは五輪までの仮設。田嶋会長は「今回はみなさんがいちばんいい場所で試合を見た」と報道陣に語ったが、埼玉、豊田(愛知)、吹田(大阪)などのサッカー専用スタジアムに比べると傾斜が緩く、ピッチが遠く感じられた。
「(1階メイン側右隅の低い位置に記者席がある)日産スタジアム(横浜)よりはまし」という意見もあったが、見やすさや臨場感は球技専用スタジアムを上回るレベルではなかった。
一方で、旧国立にはなかった観客席全体を覆う屋根や2台の大型映像装置、スタジアムWi-Fiなどが完備され、「プラスとマイナスが同居した競技場」という印象だった。

本格稼働後は記者席が3階に移るので、上層階にも行ってみたが、2~3階にかけては最大34.5度という急傾斜の部分もあり、上からの見え方は悪くない。
ただ、選手の一挙手一投足がつぶさにわかるというレベルでもない。
そもそも記者席が陸上想定で右寄りの場所に設置されているのは、サッカースタジアムとしては芳しいことではない。1~3階を移動する階段も工事中でできていないところが多くて大回りせざるをえず、コンコースもかなり混雑している点も含めると、サッカーの試合を新国立で行う圧倒的優位性があるとは言い切れなかった。
ホームとアウェーでゴール裏格差も
サポーターが陣取るゴール裏もホームとアウェーで大きな差があった。

ホーム側の神戸が一体感ある雰囲気を作り出せたのに対し、アウェー側の鹿島はマラソン用通路が中央にあるため、応援が1階席の中央で分断されてしまったのだ。右隅の陸上用撮影スペースもポッカリ空いていて、そこも一体感を欠く一因になっていた。
試合は元スペイン代表の名手、アンドレス・イニエスタ擁する神戸が前半のうちに2ゴールを奪って鹿島を突き放し初優勝、スペイン代表でともに戦ったダビド・ビジャの現役引退を華々しく飾る形になったが、ゴール裏の格差も結果に影響したのではないかと見る向きもあったほどだ。
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