新国立競技場はサッカーの「真の聖地」になるのか ピッチの遠さやゴール裏の設計などにも課題

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ホーム側の神戸の応援席(筆者撮影)

試合後、選手数人に新スタジアムの感想を聞いてみると、「(観客席から)ピッチが遠い」といったコメントが寄せられた。

また、「風呂が狭い」という感想もあった。2002年日韓ワールドカップや2019年ラグビーワールドカップ決勝が行われた日産スタジアムは20人程度が1度に入れる大浴槽があり、川崎フロンターレの本拠地・等々力陸上競技場も交代浴ができる個別の浴槽が設置されているが、新国立はわずか4~5人入れば満杯になってしまう規模というから驚かされた。

木を使った和の雰囲気を醸し出すロッカールームや天然芝ピッチの快適さや質の高さなど誇れる面もたくさんあるものの、「完全なる選手ファースト」になっていないのは残念だった。

このように天皇杯決勝を見る限りだと、現状での新国立は「陸上とサッカー・ラグビーなどの球技、コンサートなどのあらゆるイベントを網羅しようとする中途半端な施設」という感想だ。陸上競技場視点では、現状では補助競技場がないため第一種公認を受けられず、世界陸上などの世界大会は開催できない。コンサート施設としては開閉式屋根がないため活用範囲が狭くなる。

そして今回のメインテーマである球技専用スタジアムとしては、前述のとおり、ピッチまでの遠さや臨場感の問題、ゴール裏の一体感の創出しにくさ、3階記者席が陸上想定で右寄りの場所にある、選手ファーストでない部分があるなど複数の不備が見て取れた。

新国立が本当の聖地になれるのか

田嶋会長は「国立はわれわれの聖地。サッカーの歴史を作ってきたスタジアム。大切に使っていきたい」と強調したが、はたして新国立が本当の聖地になっていくのか否か。そこは未知数だろう。

歴史をさかのぼると、2000年代前半まではワールドカップ予選や五輪予選といった協会主催のビッグマッチはほぼ国立競技場で行われていた。Jリーグもナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)決勝や富士ゼロックススーパーカップなどのカップ戦は国立開催。高校サッカー選手権も準決勝からは国立が舞台。「憧れの場所」として長く位置づけられてきた。

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