医者に「正しく」かかってない人の問題行動 おくすり手帳はなぜ持ち歩くべきなのか

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過去に受けた手術を、軽い手術だったから大したことがない、もしくは忘れてしまったなどの理由で申告しない方がいらっしゃいます。局所麻酔で行ったもの、開腹手術ではなく内視鏡で行ったもの、ご年配の方が子どもの頃に受けた手術がその代表です。

例えば強い腹痛で受診し、「大きな手術はしていない」と言ったにもかかわらずお腹の診察で手術痕が見つかり、「そういえば若いとき、盲腸(虫垂炎)の手術をした」と初めてわかるケースがあります。

診察で見つかればまだ問題ないのですが、腹腔鏡手術でつくような比較的小さい傷痕は、年齢を重ねるうちにごく薄くなり見落とす可能性があります。頭部の手術も、髪の毛が伸びると隠れて見落とす場合があります。過去に複数回手術をしている場合もあるため、初対面でそのすべてを全身くまなくチェックすることは医療者でも大変難しいのです。

これがなぜ問題になるかというと、診断の妨げとなるからです。本来不必要な検査でコストがかかり、その検査を行ったぶん、正しい診断にたどり着くまでに時間がかかります。先程の具体例でいえば「盲腸の手術はした(虫垂は切除した)」という一言があるだけで、虫垂炎の検査をする必要はほぼなくなります。その結果、ほかの原因疾患に対する検査を行うことができ、早期の治療につながります。

したがって、どんなに小さな手術だと思っても、自己判断せずすべて医師に伝えることが必要です。ご自身では覚えていないほど小さい頃に手術をしている場合もありますので、1度ご家族に確認してから受診するとより確実です。

「すべて正常でした」はNG

健康診断の結果を聞くと、「すべて正常でした」「何も言われませんでした」と言う方がいらっしゃいます。しかし、具体的にどのような項目の血液検査(肝臓の数値、血圧や脂質の数値など)を受けたのか、具体的な数値がいくつだったのかわかりません。

加えて、こうした検査結果はその時その時の数値そのものに限らず、過去の検査と比較した上昇または低下の傾向も重要視されます。一見正常値に収まっていても、前回の健康診断と比較して大きく変動した数値があると、問題となる場合があるのです。

また、体質によって、ある項目が他人より高い方もいらっしゃいます。それが生来のもので健康に影響はないのか、現在の疾患によるものか判断するためにも、実際の検査結果を医師に見せることが重要です。

そのため、健康診断結果の用紙を、保管してあれば数回分持参することが望ましいです。心電図や内視鏡の検査も受けている場合は、あわせて持参しましょう。健康診断の結果には担当医師のコメントが書かれている場合もあり、診断や治療方針決定の参考になります。

いかがでしたか? ご自身やご家族の受診時の行動に当てはまるものはあったでしょうか。気づけば改善自体は簡単なことばかりですので、この機会にご自身の行動を見直し、ご家族と話し合う機会にしていただければ幸いです。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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