小林武史「生きる実感を得るためにできること」 音楽プロデューサーが本気で挑む第二の活動

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――しかし欧米では、富裕層が当たり前のように社会貢献や環境活動に取り組んでいます。でも日本人の富裕層が社会を変えようという活動はあまり目立ちません。小林さんの活動は、日本でももっと評価されてもいいと思うのですが。

もちろん、わかってくれている人は確実に増えていると感じていますが、ただやはり、もっと自分自身が腹落ちできて響くものがなければ、あるべき論だけでやり続けるのは難しいと思ったことも正直ありました。

そのとき、僕はもともと泳ぐのが好きで、スキューバダイビングもやっていたので、しばらく海に行ったんですね。そこで改めて、太陽の光や自然の生き物たちと共に自分も生きていることを実感して。自然の一部として活性化していくような感覚を取り戻した時、やはり自然を体験するのが一番早く確実に響くから、原点に立ち返ったほうがいいんじゃないか、と。

口実は何でもいいから、より多くの人に同じ感覚を体験してもらうには、自然の中に来てもらったほうが話が早いと考え始めました。そこでまずは、ファーム&ステイができる体験型農場に適した農地を探し求めて、木更津の約9万坪(30ha)の牧場跡地を買って、開墾して、有機農業をスタートしたわけです。

日本人の食に対する感性はまだ退化していない

――そのとき、「農地所有適格法人 株式会社 耕す」を設立されたわけですね。その農場で有機野菜を作り続けて「有機JAS認証」取得したことが、「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」のプロジェクトにつながった。

「耕す」を設立してから9年以上、有機野菜の栽培や養鶏に取り組んできました。そのなかで改めて感じたのは、自然は驚くほど思いどおりにならないということです。でも、自然を相手にするのは大変だとわかったぶん、寛容になれた。やってみないとわからないから、ある意味、実験だと思えるようになったんです。

ただひとつはっきりしているのは、日本文化の中で、日本人の食に対する感性はまだ退化していないということです。むしろ、食の世界で注目されている人の中には、進化している人が増えている。

有名なシェフがテレビに出て、スター扱いされる時期もありましたが、いま最前線にいる人たちはそうしたことより、農場に行っていい食材を探すことに熱心です。経済的合理性や効率だけを求めて、安い食材に走ったりしません。その傾向は、世界中の一流シェフの間でも確実に広まっています。ですから、木更津の農場で大規模な有機野菜栽培をはじめて、「KURKKU FIELDS」をスタートしたのです。

(次回に続く)

樺山 美夏 ライター・エディター

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かばやま みか / Mika Kabayama

リクルート入社後、『ダ・ヴィンチ』編集部を経てフリーランスのライター・エディターとして独立。主に、ライフスタイル、ビジネス、教育、カルチャーの分野でインタビュー記事や書籍のライティングを手がける。

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