急激な「野球離れ」で球界が直面する厳しい未来 「野球離れ元年」から10年、2020年は節目の年に

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日本では人気競技の野球だが、野球がメジャースポーツなのは北中米と東アジアだけ。他の地域ではマイナースポーツだ。世界中で人気があるサッカーやバスケットボールに比べても普及エリアが偏っている。

野球に理解がない国からは「長すぎる」「ルールが複雑すぎる」というクレームが絶えない。そのため野球ソフトボールの世界統括団体であるWBSC(世界野球ソフトボール連盟)では、ルールの見直しに着手しているが、従来の野球愛好者からの反発は大きい。

少年野球人口は10年前の3分の2以下に

2020年は、日本の少年野球の競技人口が、はっきり低下に転じた「2010年」から10年目に当たる。この時期から小学校(学童野球)、中学校(中体連)の野球競技人口が減少。今では10年前の3分の2以下になっている。この間、少子化も進んでいるが世代人口の減少は5%程度だから8倍ものスピードである。

原因としては、地上波でのプロ野球中継の激減、野球ができる遊び場の減少、格差社会が進行する中での親の負担の増加、競合するスポーツの増加、そして「昭和の体質」が抜けない野球のイメージ悪化、などが考えられる。おそらくはこれらが複合的に絡み合って急激な競技人口減につながっていると思われる。

野球界もようやく「野球離れ」対策に取り組もうとしている。これまで「野球教室」といえばユニフォームを着た小中学生に大人が指導するものだったが、今では未就学児童、小学校低学年に「野球の楽しさ」を感じてもらう取り組みがメインになっている。

筆者はプロ、大学、高校などによる「普及活動」を数多く取材しているが、やり方は異なるものの、どのイベントでも子どもたちの満足度は高く、それなりの手応えはあるようだ。

本来ならば「東京オリンピックの野球競技」が、人気回復の起爆剤になることを期待したいが、オリンピックで感動した子どもが野球を目指しても「次がない」状態では、効果は限定的だろう。

2018年夏の甲子園での金足農、吉田輝星の過酷な登板に端を発した「球数制限」議論は、2019年11月、日本高野連が委嘱した有識者会議の提案によって一定の決着を見た。「7日間に500球」という目安は、改革派からは「実質的な投げ放題だ」と言われる一方で甲子園の伝統を重んじるサイドからは「断じて容認できない」と言われている。この問題については別の形で改めて詳述するが、わずか1年で結論まで至ったのは、腰が重い野球界にしては異例のことだった。

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