昭和系「硬めプリン」再び人気を集めている理由 プリンに特化した日本初の「ガイド本」も

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3つ目の理由は、ヘルシーさである。『プリン本』の年表ページによると、カラメルが載った日本スタイルのプリンの原点は、江戸時代に出た『卵百珍』の異名を持つ『万宝料理秘密箱』の「冷やし卵羊羹」のレシピである。これは卵を寒天で硬めた冷たい料理だ。

日本人は安土桃山時代に西洋人と出会うまで、卵を食べる習慣はなかった。彼らに影響されて卵を食べるようになり、江戸時代後期には料理本が出るほど人気になった。

日本人の「卵好き」を思い起こさせるスイーツ

西洋人との交流を通じて入ってきたカステラも、卵を使う。日本人がカステラを受け入れたのは、そこにバターが入っていなかったからと思われる。乳製品の再登場は近代になる。しかし、バターの香りを、明治初期の日本人は苦手としていた。バターを使ったいわゆる洋菓子が定着するには、時間がかかったのだ。

プリンの材料は卵、砂糖、牛乳または生クリーム、水、バニラエッセンスなどの香料とシンプルで、バターは入っていない。さっぱりめで、日本人の卵好きの原点を思い起こさせるスイーツかもしれない。

小麦粉も使わないので、グルテンフリーだ。生クリームや卵を多く使うことで濃厚さを出すことはできるが、小麦粉やバターからくる重さとは異なる。その軽さは最近のスイーツの流行とも合致する。タピオカ、かき氷、パフェなどが流行る今、ケーキなどの重厚なものはそれほど人気が高くない。

昔懐かしく、しかし同時に昔より洗練されたプリンは、ひととき心を休めてくれる存在だろう。時代の変化が速すぎ、ストレスフルな生活を送る現代人には、もしかするとこういう安心できるスイーツが必要なのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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