セパージュ時代の到来(3)成長:消費者の視点《ワイン片手に経営論》第17回

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■共通言語と定量評価

 ワインのテイスティングにとって、言葉はきわめて重要ですが、例にあげた、「濃いめのルビー色」「木苺の香り」といった形容詞は、非常にあいまい度が高い。実際に、複数の人で利き酒をすると、ある人は「淡いガーネット色」「ブルーベリーの香り」と表現するかもしれません。このとき、自分が感じている香りと、その人の感じている香りが果たして同じものなのか、分からなくなってきます。

 テイスティングを何回も繰り返し訓練しているベテランの間では、多くの議論を通して、ある程度共通言語化されていきている部分もあります。このプロセスは、テイスティングを分析的、科学的なものにしようとする努力のたまものです。視覚・味覚・嗅覚で感じたことを言葉と結びつけながら、だれもが同じ表現をすることができる共通言語を確立することによって、その再現性・客観性を担保するのです。

 分析的な論理思考と、直感的な「おいしい」「おいしくない」という感覚が結びつくと、実感として人々に受け入れられていくのだと思います。この作業を極端に進めた人物が、アメリカのワイン評論家、ロバート・パーカー氏です。次の言葉に彼の思想がくっきりと表れています。

「どれだけ長くワインを造っているか、家柄がいいかどうか、どこでワインが造られているか、四ドルなのか四〇〇ドルなのか、そんなことはクソくらえだ。いいワインなら、ただいいと言うまでさ」

 ロバート・パーカーは、世界の主要なワインを個別にテイスティングし、100点満点で評価した結果を、「The Wine Advocate」(1978年創刊)という雑誌に掲載し支持を集めた人です。アメリカのボルチモア州出身で、もともと弁護士をしていました。

 1年に1万種類以上のワインを利き酒しているとも言われており、この評価結果は、「Parker’s Wine Buyer’s Guide」という本にまとめられています。ありとあらゆるワインが、点数付けされている一冊です。パーカーの強みは、特定の小売店や特定の造り手と提携しているわけではなく、市場側の顧客の一人として評価をし続けているということでした。ある種の客観性が担保されていたので、彼の科学的発想は多くの支持を集めました。

 パーカーの評価システムは、「出席点」として50点から出発し、色と外観に5点、香りに15点、味わいと余韻に20点、そして残りの10点が全体の品質レベルまたは熟成可能性に割り振られています。最初のころは、これらを一つひとつ評価して集計し、点数を算出していましたが、数多くのワインをテイスティングするうちに、飲んだ瞬間に、そのワインが何点であるかを言えるようになったというのです。

 パーカーの五感+第六感を一つの評価スケールに乗せて、世の中のワインを評価するというとても画一的な評価システムがここに登場したというわけです。ロバート・パーカーは、この評価システムを考え出した当初、ワインを点数で評価することがそもそも妥当であるのか、あまり考えなかったようです。しかしながら、消費者にとって極めて分かりやすいこのシステムは、市場に広く受け入れられ、瞬く間に世界に広がって行きました。

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