セパージュ時代の到来(3)成長:消費者の視点《ワイン片手に経営論》第17回
■品種が同じであれば香り・味わいは同じなのか?
ここまでくると、同じブドウ品種であれば本当に香りと味わいは同じなのか、と疑問に思う方もいるかもしれません。厳密に答えれば、「No」ですが、大まかな特徴としては、同じ香りと味わいであると言っても問題ないと思います。実際にラベルを隠してブラインド・テイスティングをやるときに、真っ先に考えることは、「セパージュは何だろうか?」ということです。たとえば、こんな具合です。まず、外観を見ます。やや濃いめのルビー色をした透明感のある赤ワイン。この段階で、いろいろなことが分かります。透明感があるというのは一つの特徴です。赤ワインには、透かしてみたときに、グラスの反対側が透き通って見えるものと見えないものがあるからです。
透き通って見える場合は、一般的に、ガメイ種やピノ・ノワール種に絞られてきます。香りを嗅ぎます。華やかな木苺や紅茶の香りに加えて樽の木の香りがします。ガメイ種の場合は、より甘いストロベリーの香りが多く、樽の木の香りがする場合が少ないことが多いので、ここでは「ピノ・ノワールに違いない!」と想定します。そして、味わってみて、香りから想定した品種をさらに確認します。
味わいの特徴としては、果実味や酸味・渋味などをチェックします。ここまできて、ほぼピノ・ノワールに違いないと考えると、産地を考え始めます。フランス・ワインの場合は、原産地統制呼称によって、ピノ・ノワールを造ることができる地域はサンセール、アルザス、ブルゴーニュと決まっていますので、北に行くほど酸味が強いといった判断軸をもとに、酸味が豊かであればサンセール地方に違いないと絞っていくわけです。
テイスティングの際には、まさに、「セパージュ主義」的な発想で考えるわけです。上述したように、品種が同じであれば、香りや味わいが大体似通ってくるからです。しかし、ここでまた難問が生まれます。自分が感じた味わいや香りが、他の人が感じている味わいや香りと同じであると、果たして断言できるのか、という問題です。
かのロバート・モンダヴィは次のような言葉を残しています。
「お互いが理解できる言葉をさがすのである」
「なにしろ味覚というのは、非常に個人的なものだ。自分にとってはしょっぱかったり、苦かったりしても、他人も同じように感じるとはかぎらない」
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