12代目カローラを「快作」と評価できる根本理由 「大衆車」としての使命感みなぎるクルマ

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新型となって登場したカローラ ツーリング(写真:トヨタ自動車)

走りはとてもすっきりとした感触である。ステアリングは中立位置での据わりがしっかりしていて、きちんと真っ直ぐ走るし、操舵して外輪が沈み込み、旋回姿勢となって……という一連の流れが非常に滑らかで、挙動の先読みがしやすい。サスペンションは路面からの鋭い入力もやんわりと受け止めるのに目線の上下動が少なく、フラット感も高いのである。

実は前年に発売されたカローラ・スポーツも、今回同時にマイナーチェンジを受けてサスペンションのセッティングが変更されている。トヨタ、どうやらシャシーに関していいツボを見つけたようで、こちらもデビュー時にも感心した走りがさらに見違えるほど進化しているのである。ただし、ワゴンはとくにロードノイズがやや大きめなのが惜しい部分だ。

深みを増すであろう日本人のクルマ観

パワートレインは実用域の扱いやすさと燃費で見れば、順当にハイブリッドが間違いない選択となるが、価格も考慮に入れると実は案外、1.8Lがバランスが取れている。際立つ何かがあるわけではないが、リーズナブルな選択といえそうである。

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サイズが大きくなり性能も引き上げられ、価格設定は難しいところだったに違いないが、それでも自転車や夜間の歩行者検知も可能な最新型のトヨタセーフティセンスを全車標準装備としたことには触れておきたい。全車速追従機能付きのレーダークルーズコントロールもほとんどのモデルに備わる。こういう装備を皆がどんどん活用するようになれば、週末の渋滞もだいぶ緩和されることだろう。

1966年のデビューから50年以上の歴史を刻んできたカローラだが、日本市場では実際のところ黄金時代は前半までで、後半の約25年は台数こそそれなりに出ていても存在感としては苦戦し、模索を続けてきたと言っていい。ご多分に漏れず、一時は車名の廃止も議題に上ったという。しかし結局、カローラは、カローラのままで新しい章の扉を開いた。

世界基準の内容と質を備えた新型カローラによって日本のベーシックカーのスタンダードが引き上げられれば、日本人のクルマ観のようなものも、きっと深みを増してくるに違いない。今も依然として、日本の大衆車、国民車という役割を背負ったカローラは新型で、そんなクルマに進化したように思う。手放しで歓迎したい快作の登場だ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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