インフルエンザの予防接種によってインフルエンザウイルスの「感染」を防ぐことのできる確率は、「外れることがある」ことも含め、いいときは8~9割、平均でも約6割と試算されています。
毎年1000万人感染するという事実から、あなたの感染確率を毎年10%と概算すると、予防接種を受けることにより、その確率を平均4%まで下げられるということになります。
「予防接種なんて打たなくても私はこの10年かかっていないから大丈夫」という反論をいただくこともありますが、1割の方が感染するということは、裏を返せば、そもそも9割の方は感染しません。10年かからない確率も35%ほどあると試算することができ、「あなたが特別」ということではなさそうです。11年目にはやっぱり同じだけ感染する可能性があるのです。
「6%しか減らないのだからあまり意味がないのでは」とも思われるかもしれません。しかし、予防接種はあなたの身を守るためだけのものではありません。あなたがウイルスをもらっても、症状が出ないことだってあります。知らないうちに、あなたは街中にウイルスを撒き散らす可能性を秘めているのです。
そのように捉えると、予防接種はあなたの会社の同僚、ご家族を守るためのものでもあると言えます。とくに小さなお子さん、妊産婦さん、高齢者の方がご家族にいらっしゃるようであれば、あなたが症状を引き起こさないぐらいのウイルスの量でも感染し、そしてその感染がたちまち命につながってしまう恐れもあります。
また、予防接種によりインフルエンザによる入院、集中治療室への入室、死亡率を減らせることも知られています。すなわち、予防接種はただ感染を防ぐだけでなく、感染してしまった場合に重症化することを防ぐ役割もあるのです。
一方、予防接種の副作用は、注射部位の痛みやアレルギー反応といった一時的で軽いものを除けば、100万分の1程度という天文学的に小さな確率でしか報告されていません。例えばギランバレー症候群という重篤な副作用がごく稀に出現し関連性のある可能性が指摘されていますが、インフルエンザ感染に伴うリスクとてんびんにかけると、そのリスクは圧倒的に低いものと考えられています。
これらの健康障害リスクとてんびんにかけられたうえで、アメリカを中心に複数の先進諸国で、これまで重篤なアレルギーが出た方を除き、基本的に「生後6カ月以上のすべての方がワクチンを毎年打つ」ことが推奨されています。ちなみにWHOは推奨を一部の方に限定していますが、これは「医療資源が限られた地域で高リスクの方に優先的に分配する必要があるから」と説明しており、その理由は利点ではなく資源の分配にあります。
なお、どの国でも共通して、もしワクチンが十分供給されていなければ、「妊婦さん」を最も優先すべきだと推奨されています。妊娠中はお腹に抱えた胎児を免疫が働いて攻撃しないよう免疫力が低下しており、一度インフルエンザに感染すると死亡率が高いのです。来るべきパンデミックに備えて、このこともみんなが知っておくべきかもしれません。
マスクをすれば大丈夫?
病院で働いていると「私はマスクと手洗い、うがいをしているから大丈夫」なんて声も聞こえてきます。ここにどのぐらいの根拠があるでしょうか。
マスクには、予防接種のように「感染」の確率低下を示したデータはありません。しかし、口から鼻まで覆うように適切にフィットさせたマスクを使えば、装着している間はウイルスの口からの侵入を95%までブロックできると報告されています。
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