デタラメ多数!インフルの"根拠がある"予防法 エビデンスという視点で整理、検証する

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一方、フィットが甘いとその効果が5割ほどまで落ちるとも言われています。例えば、街中を歩いていると、口だけマスクで覆い、鼻は外に出している方を見かけますが、これでは十分な効果が期待できません。

また、マスクを用いる場合、症状のある方と接するときにつけ、それが終わったらすぐに捨てるのが正しい使い方とされています。十分な裏付けがあるわけではないですが、漫然としていると、汚染されたマスクからも感染するリスクが懸念されます。また、これまでの研究でマスクを装着している方には頭痛の発生が多いことも報告されていますから、そこにも注意しつつ、しっかりつけたいものです。

例えば、インフルエンザの流行期に会社に出かけるときにマスクをつけるのなら、自宅でマスクをしっかり顔にフィットさせて装着し、会社に到着したらそのマスクは捨て、手洗いをする。帰宅時にはまた別の新しいマスクを装着し、自宅に着いたらそのマスクを捨て、手洗いをする。

これが病院などで勧められているマスクの使用法の応用になりますが、このようなことがどこまでできているでしょうか。使用済みのマスクを首下にかけて使い続けている方を見たことがあるかもしれませんが、これはとても正しい使い方とは言えません。

手洗いのエビデンスは?

手洗いには、有効性を示唆した研究がいくつかあります。いずれも病院内の話ですが、インフルエンザ感染患者を空間的に隔離し、入室前と退室後、感染の恐れがあるものに触った後に必ず手洗いをするよう医療者に指導を行い、それが実践できていた病院と実践できていなかった病院で比較をしました。すると、7~8割以上手洗いをきちんと行っていた病院では、インフルエンザパンデミック時に5~6割ほど感染拡大を減らしていたとする報告があります。

このような結果から、手洗いには感染予防の有効性がありそうですが、これはインフルエンザ患者の集まる特殊な環境での数字ですから、一般に適応しようとするとその効果はもう少し薄まりそうです。残念ながらそれを示した研究はありませんが、参考にしてみる価値はあるかと思います。

例えば、先の研究を一般社会に応用してみると、疑わしい症状のある方は外出を控え、健康な方との接触をなるべく避ける。外出後やマスクを外した後には必ず手洗いをする。ウイルス付着の恐れがある物を触ったら必ず手洗いする、といった具合です。

うがいについては、残念ながら、マスクや手洗いのような感染低下をきれいに示した報告はありません。お金もかからず害のないことですから、やるのを止める理由もありませんが、予防接種の代わりにはならないようです。

また、「インフルエンザ予防にはビタミンCがいい」「あの健康食品が効く」「腸内細菌を育ててインフルエンザを予防しよう」などと謳った食品の広告を見かけたことがあるかもしれませんが、これらすべてに科学的根拠はありません。それらはすべて、残念ながら現時点では「机上の空論」に過ぎないと言わざるをえません。今後いずれかの方法が実証される可能性は否定しませんが、お金もかかる以上、医師として胸を張って推奨することはできません。

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