「freee」大型上場、海外投資家が殺到した理由 上場相次ぐ「SaaS」ベンチャーは盛り上がるか

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クラウド会計の競合他社の間では、「経理の専門家からはfreeeのサービスは使い勝手がよくないといわれる」との声は少なくない。これに対し佐々木氏は、「確かに既存のソフトからのスイッチングコストは高いが、企業が成長してバックオフィスに人が足りなくなると、既存のやり方では立ちゆかなくなることがわかる」と言う。

freeeが狙うのは、新たに立ち上がったベンチャー企業や、事業承継で経営体制が大きく変わった中小企業などだ。「上場が視野に入ってきたり、経営者や幹部の交代であったりなど、企業の変化のポイントを押さえて製品を訴求していきたい」(佐々木氏)。実際、この12月に上場する企業のうち、3社で使われている。

AWS障害発生で見えた課題

一方、今年8月にはfreeeのクラウドインフラとなっているアマゾン ウェブ サービス(AWS)の一部データセンターで冷却装置の故障による不具合が発生。freeeのサービスが一時つながりにくくなった。佐々木氏は「経営上の最も重要なモニタリング事項だと思っている。今回の件でさらに冗長化を進めている。いろいろなリスクを考える体制強化のきっかけになった」と振り返る。

現在freeeは会計以外にも、人事労務や会社設立、上場準備や内部統制など機能を広げつつ、連携する外部アプリも増やしている。さらに今年からはfreee上に蓄積されたデータを活用する金融サービスも強化。6月からは、会計データを基に自動で資金繰りを予測し、可能性の高い資金調達手段を提案するサービスを始めた。

「最終的には“AI CFO(財務責任者)”を実現し、人がお金のやりとりを意識しなくてもいい世界を作りたい」という佐々木氏。クラウド会計ソフトの国内普及率は、まだ14%ほど。早くからクラウド会計が普及したオーストラリアやニュージーランドは6割を超える。「それだけチャンスが大きいと思う海外投資家が、日本の市場に大きな期待を寄せている」(同)。

生まれ育った実家の美容院で経理業務の大変さを知り、ベンチャー企業のCFO時代には自動化の必要性を痛感。その後入社したグーグルでは中小企業のテクノロジー活用が進んでいないことを肌で感じた。そんな佐々木氏率いるfreeeはどれだけ成長することができるか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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