グーグル検索を支える「巨大クラウド」の秘密 世界最強インフラの未来を最古参幹部に聞く

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グーグルのテクニカルインフラストラクチャ担当上級副社長、ウルス・ヘルツル氏(撮影:尾形文繁)
昨年、創業から20年を迎えたアメリカのIT大手グーグル。検索やマップ、ユーチューブなど、世界中に10億人以上のユーザーを抱えるサービスは、膨大な数のデータセンターや海底に張り巡らされた通信ケーブルなど、世界でも類を見ない規模のITインフラで支えられている。
法人向けクラウドやAI(人工知能)関連のビジネスが盛り上がり、グーグルの2018年の設備投資額は254億ドルと、前年比で倍増。ソフトウェア分野の世界大手は、巨大なハードウェアのインフラで成り立っているのだ。グーグルのインフラがどのように開発・運用され、今後どう変わっていくのか。同社の8番目の社員で、全社のITインフラを長く統括するウルス・ヘルツル上級副社長に話を聞いた。

最初の肩書は「検索エンジンメカニック」

――世界中に巨大なデータセンターを持つグーグルのインフラチームとしてのミッションは。

究極のゴールは、インフラを“見えない”ようにすることだ。最も効果的なインフラというのは空気のようなもので、その存在自体が気づかれない。つねにそこに存在しつつ、信頼できる。クラウドは、細かなことをあなたから見えないようにする。

スマートフォンが新しいバージョンにアップデートされるからといって、あなたは何もする必要がない。そのまま使える。どのようにすればグーグルのインフラをスマホのようにできるか。これを急速なイノベーションと低い所有コストで実現している。

――グーグルの20年の歴史を振り返って、これまでのデータ処理のインフラの転換点として、どのようなものが挙がりますか。

入社後に作った最初の名刺には「検索エンジンメカニック」という肩書が書かれていた。「(アルゴリズムを開発している会社なのに)なぜメカニックなのか?」とよく聞かれたが、あらゆるものがうまく機能していなかったからだ。日々トラフィックが増え続ける中で起こる問題の数々に対処し、次の週を切り抜けられるかどうかが目標だった。初めの3~4年間は目の前の問題の対処が最優先だったと思う。

こうしたインフラの問題を解決すべく、2003年に開発されたのが、検索などグーグルのあらゆるサービスでデータ処理に使われる「グーグル・ファイル・システム」だ(編集注:個々のサーバーが故障してもデータが失われないうえ、自動的に復旧できる大規模な分散ファイルシステム)。このプロジェクトのために優秀なエンジニアを雇い、日々の業務から離して中長期の開発に専念させた。こうした取り組みは初めてだった。

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