グーグル検索を支える「巨大クラウド」の秘密 世界最強インフラの未来を最古参幹部に聞く

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グーグルは「Kubernetes(クーバネティス)」と呼ばれるコンテナの管理ツールを開発し、細かなコンテナの設定などを自動化していた。アンソスはクーバネティスの拡張版とも言えるもので、もっと大きなコンテナの固まりの管理を任せられるサービスだ。車でも、店舗でも、工場でも、異なる複数のクラウドプラットフォーム上でも、どこでも同じアプリケーションをより自由に動かせるようになる。いわば「自動運転クラウド」だ。

ウルス・ヘルツル(Urs Hölzle)/グーグル・テクニカルインフラストラクチャ担当上級副社長。グーグルのサービス運営に必要なデータセンターやネットワークの設計、導入、運用を統括する。スイス出身。スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの博士号を取得。博士課程在籍中に起業したベンチャーは、旧サン・マイクロシステムズに買収された(撮影:尾形文繁)

――そうなると企業からしてみれば、どのクラウドプラットフォームを使っても同じということになるのでしょうか。

いや、そういうことではない。差別化要素はまだまだ残る。グーグルのクラウドはデータ分析基盤の「BigQuery(ビッグクエリー)」やTPUなど、他社にはない強みがある。代替可能な存在ということではない。

なぜアンソスを開発したかというと、オンプレミスやあらゆるクラウドプラットフォームに共通する作業だからだ。競争領域ではなく、オープンな標準規格が必要な領域なのだ。

「アンソス」はグーグルの成長を助ける

――クラウドサービスを活用する企業からは、なるべく特定のサービスに「ロックイン」されたくない(縛られたくない)という声もよく聞かれます。アンソスによって、ロックインも防げるということでしょうか。

そもそもクラウドは産業としてまだ成長初期だ。クラウド上にあるデータはオンプレミスのそれよりも圧倒的に少ない。だからAWS(アマゾン ウェブ サービス)とのゼロサムゲームという段階ではなく、アンソスのようなサービスによって潜在顧客にとっての選択肢を増やしたい。

そのうえで、クラウド間の移行がより容易になれば、アンソスの存在が、AWSより事業規模が小さいグーグルの助けにはなるだろう。なぜなら巨大な市場が広がっており、より流入しやすくなるからだ。

アンソスはオープンソースのOS(基本ソフト)である「Linux(リナックス)」のような存在だと考えている。リナックスによって、あらゆるアプリケーションがさまざまなハードウェア上で動かせるようになった。クラウドにはそういった仕組みがまだ足りない。

あるソフトウェアベンダーがアプリケーションを開発しようとしても、さまざまな環境に適合させなければならない。アンソスはそういった面倒を取り除く。スマホの世界もiOSとAndroidが登場し、アプリストアが生まれたことで、ソフトウェア産業が急成長した。法人向けのITの世界でも同じことを実現したいと考えている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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