グーグル検索を支える「巨大クラウド」の秘密 世界最強インフラの未来を最古参幹部に聞く

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――IoT(モノのインターネット)や次世代通信5Gの時代に入ると、クラウドをはじめとするコンピューティングインフラはどのように変わっていくのでしょうか。

ユースケースに大きく左右される。世の中ではすでに多くのエッジデバイス(IoT機器)が使われているが、スマートスピーカーや温度センサーなどは、必要なときにクラウドと少量のデータをやりとりするだけだ。監視カメラにしても、99%の時間は何も起こっていない。大量の動画データをつねにクラウドと通信するのは得策ではない。

グーグルが開発した「エッジTPU」(IoT機器内のデータ処理のためのTPU)などを用いれば、監視カメラの中で人物の検知などの処理ができる。いちいちクラウドと通信をしなくても、エッジで処理し、必要最低限のデータがクラウドに送られるという世界はますます広がるだろう。

クラウドゲーム「スタディア」の可能性

――エッジだけで処理しきれない場合は?

高速通信でクラウドとやりとりをする必要のあるケースもこれから出てこようとしている。その象徴がクラウドゲームだ。今秋から提供を始める「スタディア」は、35Mbpsの広帯域で高品質の通信を必要とする。通信量が多いだけでなく、低遅延も求められる。そうでないと映像にラグが生じる。

グーグルが今秋から提供を始めるクラウドゲームサービス「スタディア」(記者撮影)

スマホの性能がどんなに高くても、何千ものキャラクターが出てくるようなゲームには対応できないし、電池の制限もある。だから重い計算処理はクラウド側で行われ、画像のレンダリングやプレーヤーの操作状況だけがスマホ側で処理される。固定回線では可能だが、4G通信では心もとない。5Gのカバー範囲が広がれば可能性は広がるだろう。

データ処理はなるべくユーザーに近いところで行われないといけないため、(データセンターとは別に)世界各地にエッジノードと呼ばれるデータ処理設備を備えた。ソフトウェア面でも高画質の画像をリアルタイムに圧縮してユーザーに流し、ユーザーの反応も低遅延で受け取れるようにした。クラウドチームとスタディアチームが密に協力し、約3年をかけて仕組みを構築した。

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