「小さすぎる水筒」が予想外にバカ売れした理由 会社側が想定しなかったこれだけの用途

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筆者も先日、息子の習い事のサッカーに付き添った際、ポケトルに助けられた。寒い季節の見学は冷えとの闘いになるのだが、ホットのお茶で体を温めながら過ごせたのだ。こうしたちょっとした外出では、レジャー時に使う500mlの水筒では重いうえに飲みきれないし、ペットボトルのお茶はすぐ冷めてしまうので、その便利さを実感した。

また、購入者全体の3割は男性だ。ビジネスバッグの折り畳み傘収納などにも収まると好評だという。好きなコーヒーを入れたり、職場でコップ代わりに使ったりする男性も多いとか。オフの日にお酒を入れて持ち歩く男性も割といるらしいが、説明書のとおりアルコールの投入は禁じられているのでご注意を。でも、筆者もお酒が好きなので気持ちはわかる。

他、散歩やウォーキング、熱中症対策や野外フェスなどのために買う人、2種類の飲み物を持参したくて買う人、プレゼント用に複数本買う人など、ニーズは多岐にわたっている。

なぜ過去にないサイズ感を打ち出せたのか

東急ハンズでも売れている。写真は高崎店(写真提供:東急ハンズ)

東急ハンズでも売れている。同社でも事前の想定を上回り2019年のマグボトル売り上げ数量において、1~10位までこのポケトルシリーズが占めているという。

東急ハンズでの従来の売れ筋は500mlで、とくに昨今は大きめのサイズが売れており、事前に小型商品への強いニーズは感じられなかったという。しかし、店頭にポケトルが並ぶと、お客はすぐさま反応。

「大手メーカーが挑まなかったこのサイズ感は、従来の業界内の常識を越えていました」と、MD企画部のキッチン担当バイヤー・足立未央さん。発売後はさまざまなライバルメーカーから問い合わせがあり、多くの担当者が感心していたのが印象に残っているという。

なぜ、業界の常識を打ち破ることができたのだろうか。1つは、この商品ができるまでの経緯にあるだろう。

DESIGN WORKS ANCIENTの小林裕介代表取締役(撮影:尾形文繁)

もともとは土産品の企画製造などを行う会社に勤めていた小林代表。異業界から生活雑貨の業界に参入したため、「『水筒はこういうものだ』みたいな思い込みがないかもしれない」(小林代表)。それが大胆な商品企画につながった面は確実にあるだろう。

それにしても、なぜこれほどまでに小さな水筒を作ろうと思いたったのか。実は、小林代表は、10年前からOne Tasteという生活雑貨のOEMを主軸とした会社を経営している。ところが市場環境が変わり始めた。

「今はモノが売れない時代です。OEM先の発注数も徐々に減ってきて、次の10年を見据えたときにオリジナル商品を作らねばと思ったんです」

そうして新たにDESIGN WORKS ANCIENTを設立した。ところが、すぐにはオリジナル商品を生み出すことはできなかった。人脈を活かせるランチ雑貨で何か作りたい。でも、後発で市場参入するには、思い切ったものをやらなければ――こうしたイメージはあったが、形にならないまま3年近くが過ぎていった。

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