今こそ「わからず屋」上司に引導を渡すべき理由

根っから無礼な人は自分が無礼と気づかない

日本の職場と同じように、上司が部下に対して無礼で横柄な態度をふるって傷つけたり、過小評価したり、同僚がネガティブな感情を押し付け合ったりしてストレスを常態化させる問題がアメリカでも蔓延しているが、アメリカ心理学会の試算によれば、職場のストレスによってアメリカ経済全体にかかるコストは、1年間になんと5000億ドルにものぼるというから驚愕する。

ポラス氏の調査によれば、無礼な人間が職場にいる場合、80%の人がそれを気に病むせいで仕事に使う時間を奪われており、78%の人が組織への忠誠心を低下させ、そして、48%の人が意図的に仕事の手を抜いているという。

無礼な人間のせいで離職者が出ればコストも跳ね上がる。しかも、会社を去っていく可能性が高いのは、圧倒的に平均以上の能力を持った社員なのだ。このような実態は、薄々感じられていても具体化はされづらい。社員は自分が手を抜いているとは言わないし、離職者はその本当の理由を雇用主には告げないものである。

ほかにも、社内での無礼さが顧客を失うことにつながっているというデータや、人間の想像性や認知能力は、他人に対する無礼な態度を見ただけでも下がるという脳科学的実験など、次々と「無礼さ」が企業に与える損害の根拠が提示されていく。その分析の徹底ぶりは、まるでわからず屋のリーダーたちに向かって「いい加減に気づきなさい!」と引導を渡すかのようだ。

こういったものを読むと、つい「精神力が足りないんじゃないか?」「昔はもっとモーレツだったけどなあ」と考える人もいるかもしれない。だが、もはやそのようなマインドでは組織は生き残ることができず、現実の働く人々の様子を把握し、「礼節とはなにか」を考える企業こそが、大きな成功を収めているという実例を示したのが『シンク・シビリティ』なのである。

無礼な人は、自分が無礼な人だと気づかない

では「礼節」とはなんなのか。ポラス氏は、「礼節ある人」と「礼節ある会社」を掲げ、まずは、個人の礼節を高め、能力を伸ばしていくためのメソッドを紹介していく。

日本人なら礼節なんて身に付いている人が多いけどなあ、という感覚で読んでいた筆者は、ここで、ポラス氏の目指す「礼節」という意味の骨太さに驚いた。

どの分野であっても、成功している人は皆、物事を改善していこうという努力を怠らない。自分が他人に対し、いつもどのような態度で接しているかをよく見つめてみよう。その結果、たとえどれほど不快な真実が明らかになったとしても、それを正面から見つめなくてはいけない。作家、ブライアント・マッギルはこんなふうに書いている。
「人が自分自身のありのままの姿を見つめる能力、勇気を持たない限り、変化は決して起こらない」
(第5章「あなたの礼節をチェックしよう」より)

まずは、己を知るためにチェックリストを用いた自己分析を行う。無礼な人は、自分を無礼な人だとはわかっておらず、また、無意識に他人を傷つけていることがあるからだ。

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