中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ ラガルドECB総裁はやはり政治的すぎるのか
11月にECB(欧州中央銀行)総裁に就任したラガルド氏の最初の任務は、「中期的に2%未満であるがその近辺(below, but close to, 2% over the medium term)」とされている「物価安定の定義」を抜本的に見直すことであり、金融政策の戦略を修正することであると想定されている。
ECBが金融政策の戦略を見直すのは2003年以来、実に16年ぶり。新任総裁にとっては大事業である。現行の「物価安定の定義」を正面から解釈すると「2%に到達すれば引き締められる」との誤解を招きやすいため、あくまで2%を境として対称的に物価目標をにらんでいることを明確化したいとの思惑がある。「物価安定の定義」は確かに時代に合わなくなっていると思われるため、この修正は必要な措置であると筆者も考えている。
新しいEUとしては環境問題に本気
しかし、ここにきて気になる動きが断続的に報じられている。それはラガルド総裁が今回の修正作業の一環として、環境問題、とりわけ気候変動に関する論点を組み入れることに関心を示しており、これを政策運営上の重要テーマとしたいという意向を持っていることだ。
欧州議会の場でもラガルド総裁は「物価安定の二の次だが(secondary to protecting price stability)」と断った上で、「気候問題をECBのマクロ経済モデルに織り込むべきであり、EU(欧州連合)域内の銀行を監督するにあたってもそのリスクを考慮に入れる」と意気込みを見せている。
ちなみに、ラガルド体制と同タイミングで発足した新たな欧州委員会を率いるフォンデアライエン新委員長も、欧州議会における演説で「The European Green Deal(欧州のグリーンディール)」はマストであることを強調しており、やはり環境を新体制で重視する姿勢を示している。
新生EUの顔とも言える2トップがこうしたスタンスを明らかにしている状況は欧州が持つ環境問題への意識が他国・地域よりも強いものであることを象徴していると言える。何かにつけて理想に振れやすい欧州だけにその過剰な動きには懸念も生じるところだ。
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