中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ

ラガルドECB総裁はやはり政治的すぎるのか

ラガルド新総裁は環境問題をECBの政策に加えようとしている(写真:REUTERS/Francois Lenoir)

11月にECB(欧州中央銀行)総裁に就任したラガルド氏の最初の任務は、「中期的に2%未満であるがその近辺(below, but close to, 2% over the medium term)」とされている「物価安定の定義」を抜本的に見直すことであり、金融政策の戦略を修正することであると想定されている。

ECBが金融政策の戦略を見直すのは2003年以来、実に16年ぶり。新任総裁にとっては大事業である。現行の「物価安定の定義」を正面から解釈すると「2%に到達すれば引き締められる」との誤解を招きやすいため、あくまで2%を境として対称的に物価目標をにらんでいることを明確化したいとの思惑がある。「物価安定の定義」は確かに時代に合わなくなっていると思われるため、この修正は必要な措置であると筆者も考えている。

新しいEUとしては環境問題に本気

しかし、ここにきて気になる動きが断続的に報じられている。それはラガルド総裁が今回の修正作業の一環として、環境問題、とりわけ気候変動に関する論点を組み入れることに関心を示しており、これを政策運営上の重要テーマとしたいという意向を持っていることだ。

欧州議会の場でもラガルド総裁は「物価安定の二の次だが(secondary to protecting price stability)」と断った上で、「気候問題をECBのマクロ経済モデルに織り込むべきであり、EU(欧州連合)域内の銀行を監督するにあたってもそのリスクを考慮に入れる」と意気込みを見せている。

ちなみに、ラガルド体制と同タイミングで発足した新たな欧州委員会を率いるフォンデアライエン新委員長も、欧州議会における演説で「The European Green Deal(欧州のグリーンディール)」はマストであることを強調しており、やはり環境を新体制で重視する姿勢を示している。

新生EUの顔とも言える2トップがこうしたスタンスを明らかにしている状況は欧州が持つ環境問題への意識が他国・地域よりも強いものであることを象徴していると言える。何かにつけて理想に振れやすい欧州だけにその過剰な動きには懸念も生じるところだ。

次ページ中央銀行は環境問題に貢献できるのか
マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • iPhoneの裏技
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 「非会社員」の知られざる稼ぎ方
  • 岐路に立つ日本の財政
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
人望のない人は「たった一言」が添えられない
人望のない人は「たった一言」が添えられない
都心vs. 郊外 家を購入するならどっち?
都心vs. 郊外 家を購入するならどっち?
30~40代でも起こりうる『孤独死』の過酷な実態
30~40代でも起こりうる『孤独死』の過酷な実態
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
漂流する東芝<br>舵取りなき12万人の悲運

再出発したはずの東芝の漂流が止まりません。再建請負人の車谷暢昭社長が電撃辞任。緊張感が増すファンドとの攻防や成長戦略の構築など課題は山積しています。従業員12万人を超える巨艦企業はどこに向かうのでしょうか。

東洋経済education×ICT