日本の「ネット通販利用」がまだ遅れている理由 アメリカや中国ではすさまじい速度で浸透
アメリカで暮らしていると、オンラインショッピング(EC、ネット通販)が必須で生活の隅々にまで浸透していることが肌感覚でわかる。生活用品から食料品まで、実店舗で購入するよりクリックして注文する人が非常に多い。2018年時点で、人口約3億人のうち、インターネット人口が約2.8億人(約93%)に達している。EC利用者(digital shoppers)の人数は2.2億人、つまり人口の約72%だ。驚くべき利用率の高さだ。
中国の勢いも猛烈である。中国はすでに世界で最も大きなインターネット市場になり、7.72億人のインターネット人口を有している。2018年のEC利用者は6.2億人で、そのなかでもとくにモバイル端末経由取引の利用者は5.5億人、インターネット人口の73%に達し、世界一多い。
「家計消費状況調査」(総務省統計局)によれば、日本でのEC利用率は35.9%(2018年)。日本でも年々拡大してきたものの、アメリカや中国ほどの急速な勢いは感じられない。
今回は、アメリカ・中国・日本での経験から、とくになぜアメリカにおいてECが普及しているのかを考察し、日本のEC発展のヒントを提示したい。
ECでの祭りを通して消費者の習慣を育成
重要な理由の1つは、小売業が消費者のEC習慣を育成してきたことだ。例えば、11月はアメリカと中国の小売業にとって重要な時期だ。アメリカでは、11月第4木曜日(Thanksgiving Day)の翌日にあたる金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、全国小売店は一斉にセールを始める。
ECが進んだ結果、2010年頃から、Thanksgiving Dayの翌月曜日を「サイバーマンデー」と呼ぶようになり、オンラインショッピングのビッグセールも加えるようになった。近年、オンラインもオフラインも、ブラックフライデーをメドに大々的なキャンペーンを行っている。
とくにオンラインでは、11月に入ると、メーシーズ(Macy’s)、ターゲット、ベストバイ、コストコ、セフォラ(SEPHORA、アメリカ・アジアを中心に展開するLVMH傘下の化粧品・香水販売チェーン店)などのバーゲン情報が絶えず更新されている。
一方、中国でも、アリババが作り上げた11月11日「独身の日セール(W11)」があり、現在はオンラインもオフラインも、アリババグループもそうでなくても、その商戦に加わるようになった。
この2、3年日本企業も参入するようになり、ユニクロ・資生堂・花王をはじめとしたさまざまな日本企業が大きな販売実績をたたき出すようになった。
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