日本の「ネット通販利用」がまだ遅れている理由

アメリカや中国ではすさまじい速度で浸透

このような、ますます盛んであるECには、もう1つのトレンドが生まれている。それが、D2C、つまりDirect to Consumerである。自社運営ECサイトやSNSで直接消費者に〇〇する販売手法で、近年注目されている。

AmazonのようなECモールに出店し、他社商品と比較されながら消費者に購入されていたが、D2CはSNS・オフライン体験を通じて、消費者を自社運営ECサイトに誘導し、商品を含むライフスタイルの世界観を直接提供しながら販売するECだ。

例えば、「ナチュラル」「余計なものが入っていない」「肌に優しい」ことでアメリカの女性に人気な化粧品「ドランクエレファント(DRUNK ELEPHANT)」はその成功例である。創業から7年、従業員約100人の企業で2019年は約130億円の売り上げを見込む。SNSを駆使しながら、今は生活用品まで展開しており、2019年11月に資生堂のアメリカ法人が約900億円で買収した。

オフラインの有効な活用事例

D2Cにおいて、もっと重要なのはオフラインも活用する「体験」の重視である。D2Cの成功例だと言われているのはマットレス会社の「キャスパー(Casper)」だ。

「マットレスではなく睡眠を提供する」というコンセプトに基づき、店舗を置かず、ECのみで販売するチャネル戦略を用いている。

100日間のトライアルや返品無料などで前述した消費者ストレスを軽減するだけではなく、いかに消費者に体験してもらい、ファンになってもらうかにも工夫した。例えば、マットレスの注文で1番の問題は荷物の大きさである。キャスパーはマットレスを巻くことで郵送可能とした。

簡単に開けることもできる大きな贈り物のようで、子どもと遊びながら新しいマットレスの設置をする動画(「Unboxing」という)もネットのあちこちで見つけることができる。また、PR方法についても的確だ。ニューヨークの地下鉄の中でポップアップストアを開き、忙しい人々に体験してもらったり、ロサンゼルスの有名人にインスタグラムで投稿してもらったりする。

つまり、伝統的なマス広告・店舗販売ではなく、無料返品や実体験イベントなどを通して直接消費者のココロをつかみ、消費者に直接自社サイトで購入してもらうマーケティング手法である。

キャスパーは現在、「気持ちよく暮らす」をテーマとした雑誌、ベットライト、枕、ベッドフレーム、連動するアプリ、そして、犬用ベッドなど睡眠にかかわる商品・サービスも展開している。ますます細分化してきているEC市場ではあるが、このようなD2Cは、今後どんどん出てくるであろう。

もちろん、アメリカと中国のECが進んでいる理由を考えるとき、「国土が広い」という要素を無視してはいけない。国土があまりにも広く、すべての地域に同じ商品を実店舗経由で届けるのは無理であり、地域により実店舗の設置自体が難しいことも考えられる。また、アメリカでは通信販売の習慣が以前からあったということもあろう。

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