日本の「ネット通販利用」がまだ遅れている理由

アメリカや中国ではすさまじい速度で浸透

値下げ前価格から〇〇割引が共通であり、消費者は「その日になると、必ず安くなる」ことを理解しており、消費意欲が湧いてくる。そして、ネットの強みを生かし、クーポンも直接配信され、確実に実店舗より安いことが多いので、消費者は「ネットで買ったほうがお得」「ちょっとネットクーポンがあるかどうかを探してみよう」と思うようになる。それにより、EC習慣が少しずつ育成され、慣れたら手離せなくなり、ECは一般生活に浸透するようになった。

オンラインとオフラインの融合でECストレスを軽減

もう1つ重要な理由は、とくにアメリカでは返品がしやすく、消費者のECストレスを軽減していることだ。

三菱総合研究所の運営する女性コミュニティーでの発言内容から、日本人がECを利用しない心理を分析してみると、「合わなかったらどうしよう」「衝動買いで買いすぎで困る」「買ったものと違う(ため返品・交換が面倒くさそう)」というのがよく出てくるが、アメリカの返品の便利さはそのストレスを解消してくれる。基本的に、服の質感やサイズが合わなかったり、好みと違ったりしたら、店舗まで持っていけば素早く返品に対応してくれる。

筆者は約6年前アメリカにいたとき、オンラインでスキンケア用品を購入した。使ったところ肌に合わないと感じ、その実店舗まで持っていった。別商品を購入するつもりの相談だったが、「肌と合わないみたい」の一言だけで、直ちにギフトカードで返金してくれたことを今でも鮮明に覚えている。

ここまでさっと返品できるのは、アメリカだからかもしれない。ショッピングセンターに行くと、「RETURNS」カウンターはとてもわかりやすいところにあり、専門担当者も常駐している。

RショッピングモールにあるRETURNSカウンター(筆者撮影)

また、郵送で返品するのもよく行われる。靴をメインに販売するサイト「ザッポス(ZAPPOS)」はその一例だ。靴だとブランドによりサイズに違いがあるためECにとって少しハードルが高い商品だが、ザッポスだと、1回にいくつかのサイズを購入し、届いたら試着し、サイズが合って気に入った靴のみを残し、そのほかは全部配達会社のオフィスに持っていくだけでよいのだ。

つまり、消費者は、自分のニーズに合わなかったら店舗か配送会社のオフィスまで持っていけばよい。返品のストレスが極めて低いため「いっぱい買ってもよい」「とりあえず買っちゃおう」という心理が生じる。企業側は返品処理にコストがかかるが、結果的に消費者の財布を緩めることができ、消費を促進する。

百貨店のサービスカウンター。前は服直しのカウンターで後ろはピックアップエリア(筆者撮影)

なお、返品について、後述するシアーズがカタログ販売において「無条件返品」文化を作り上げたと言われている。返品コストを負担するアメリカの販売者は現在、返品をどこまでするかについて、推進派と検討派に分かれるようになっているが、しばらくは簡単に変えられないと見られている。

また、「ネットで買った商品の取り扱いは別?」というストレスも心配無用だ。ネットは、クーポンや数量限定セールが多い。ネットだと、実店舗での販売価格の4割引きや半額で買えるケースは珍しくない。だが、ECで買った洋服の直しも店舗まで持っていけば、店舗で買ったものと同じく、無料で直してくれる店舗も多い。また、今年のブラックフライデーでは、ネットで買い物し、実店舗でピックアップするケースも増えているそうだ。

その結果、中国でも同じことが発生しているが、実店舗は事実上ショールームとカスタマーサービスカウンターになり、ネットで触れ合えない消費者との重要なタッチポイントに変化しつつある。近年小売業がECにくわれ破産にまで追い込まれるケースが少なくないが、生き残るためEC戦略をすすめ、その中で店舗の役割を再定義していくことが肝心だろう。

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