当たり前に「賄賂」があるカザフスタンの暮らし

ソ連崩壊から30年弱、何でも金で買える社会

また、市場経済化で生活のスピードが速くなった反面、社会の仕組みが変わっていないので、役所や病院などでは膨大な時間、手間がかかる。金で短縮できるならそうしたいと考える。手っ取り早く金で解決、です。コネを使うといずれ借りを返す必要がありますが、金で清算できるなら後腐れなくていいと考える人も多いですね。

ただ、コネが不要になったわけではありません。賄賂は誰にどう渡すかが重要で、それにはコネの有無が影響します。強いコネがあれば支払額が減る可能性もある。金がある人はコネがあり、コネがある人は金があり、別々に論じられないともいわれます。

豊かだから賄賂が減るわけではない

──心ならずも金のやり取りをしなくてはならない場合もある。

公的機関での賄賂の話になると必ず出てくる言葉が「ピラミッド」。組織のトップを頂点とし、それぞれのレベルの上長が権限を背景に部下を支配する重層構造を指します。部下は職を確保するために、市民から徴収した賄賂の一部を上納、引き換えに庇護を受ける。金を吸い上げるピラミッドの構成員になった以上、個人の意思であらがうことは困難です。

岡 奈津子(おかなつこ)/1968年生まれ。94年東京大学大学院総合文化研究科にて修士号を取得後、アジア経済研究所入所。2008年、英リーズ大学政治国際関係学科博士号取得。専門は中央アジアの政治と社会。90年代半ば以降、2度の長期滞在を含め、ほぼ毎年カザフスタンを訪問している。(撮影:ヒダキトモコ)

カザフスタンは地下資源に恵まれ、中央アジアでは圧倒的に豊かですが、豊かだから賄賂が減るわけではないのです。いわばシステム化されている。また、腐敗ではなく投資という観点で見ると、金でポストを得た場合、できるだけ早く賄賂で投資額を回収する必要がある。金を渡した上長が異動したら、そのポストが安泰とは限りません。

──「ピラミッド」は共通認識?

例えば税関のトップが地方の幹部ポストを売って儲けたと報じられても、誰も驚きません。そういうものだと思っている。カザフスタン全体がピラミッドで、中に小さなピラミッドがたくさんあります。

──払うほうも納得ずくですか。

「保険をかける」という表現があって、払わないリスクがある。みんなが払っていて、自分だけが払っていないと不利益を被るかもしれない。リスク回避に払っておこうとなります。合理的な理由もあります。例えば大学の奨学金は成績で決まるので、賄賂の額より奨学金が多ければ賄賂を贈ります。

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