新人を潰す上司は叱り方の本質をわかってない ほめるためには日ごろから観察が不可欠だ

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ところであなたは、新人をほめる際に、どんなことを意識しているでしょうか。
例えば、あなたが、携帯電話ショップで働く店長だとします。その店舗では、毎朝朝礼があるのですが、必ずその朝礼の1時間前に出勤してくるある女性スタッフがいます。そのスタッフとあなたの関係性は、日頃からよく揉めていることもあり、あまりよくありません。
しかし、あなたは、彼女が早く出勤して、いろいろ準備してくれていることをほめたいと思っています。彼女をほめるには、次のどちらの言葉がより適切だと思いますか?
例①
「いつも早くお店に来て、すごく頑張っていますね」
例②
「いつも早くお店に来て、棚を拭いたり、カタログを整理してくれてたんですね」
(179〜180ページより)

まずは①の「頑張っていますね」というほめ言葉。これが使われる機会は多いが、この表現は意外と誤解を生むことがあると島村氏は言う。

新人との信頼関係を築くには

事実、島村氏の知人のショップ店長がこう伝えたところ、「頑張ってるってなんですか。無理してほめなくてもいいですよ」という返答が返ってきたことがあったそうだ。原因はなんだろう? 彼女はなぜ、そんなネガティブな反応を示したのだろう?

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まず考えられるのは、その店長と女性スタッフとの信頼関係が希薄すぎたこと。しかも彼は店長であるにもかかわらず、配属されたばかりの彼は店頭業務の習得がまだ不十分な状態だったという。そのため「頑張っていますね」という言葉が偉そうな評価のように聞こえ、彼女の神経を逆撫でしてしまったということだ。

例えばこのように。「頑張ってますね!」「偉い!」など評価するように聞こえるフレーズを使う際には、相手との信頼関係が構築されていることが前提。そうでないと、あらぬ誤解を生むことになるというのである。

では、どのようにほめるべきなのだろうか? いちばんいいのは、先の②の例のように「いつも早くお店に来て、棚を拭いたり、カタログを整理してくれてたんですね」と“事実を事実のまま伝える”こと。そうすれば、相手に真意が伝わりやすくなるというわけだ。

この表現のポイントは、日頃の観察を通じて、ほめる部分を、評価を挟まず、事実を事実のまま伝えるということです。「いつも早く出社している」という事実と「開店の準備をあれこれとしてくれていた」という事実を伝えることで、相手にしてみれば「細かいところまで見ていてくれたんですね」と思います。
指導者の中には、自分の家族もほめたことがないのに、いきなり新人をほめるのは照れ臭いという人も意外といるのですが、この方法ならほめやすいと思います。
(182〜183ページより)

もちろん、事実を事実のまま伝えるためには、日ごろから「観察」することが必要となるだろう。そもそも新人と信頼関係を構築するためには、「観察」が不可欠なのだから。

いずれにしても最短の育成のためには、地味でも観察をベースにしてコミュニケーションを積み重ねていくことが近道になりそうだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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