日本人が驚く、米国発「新型デパート」の衝撃 Amazonにない「価値の複合化」が生き残りの鍵

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今回筆者は、同社の創業者の1人でありCEOのマット・アレキサンダー氏にインタビューを実施した。日本人によるインタビュー取材、日本のメディア登場は初である。対談の一部を紹介したい。

「売り上げ」よりも「顧客体験」を重視する

――「Neighborhood Goods」の立ち上げに至った背景を教えてください。

2014年にテキサスで開いた「Unbranded」が発端だ。地元の起業家やシェフ、アーティスト等が顧客や聴衆の生の声を聴くことができる場としてフリー出店スペースを提供した。このアイデアを「D2Cブランド」向けに転用したのが「Neighborhood Goods」だ。

オンライン市場の競争が激化する中、より低コストで顧客を獲得し、新製品をテストするためのマーケティングツールとしてリアル店舗を持つ「D2Cブランド」が増えている。「エバーレーン」「リフォーメーション」「ワービーパーカー」等が典型だ。

しかし、リアル店舗を持つための初期費用や法的手続きは、多くの「D2Cブランド」にとって高いハードルとなっている。だからこそ、「D2Cブランド」がコストを抑えて持続的かつ効率的なマーケティング活動を行えるリアルのプラットフォームを実現したいと考えた。

マット・アレキサンダー(Matt Alexander)氏/ロンドン生まれ。2014年のUnbranded創業をはじめ、さまざまなスタートアップに関わったのち、2017年にNeighborhood Goodsを創業。(写真:本人提供)

――「Neighborhood Goods」における顧客体験とは、どのようなものなのでしょうか? 「一般的なデパートとの違い」を教えてください。

まず、われわれは顧客との長期的な関係を構築すべく、「売り上げ」ではなく「顧客体験」の最大化を重視していることについて強調しておきたい。

われわれの店舗ではスタッフが顧客に押し売りすることなく、ホスピタリティを持ってブランドや商品に関する「ストーリーテリング」に徹している。そのために、賃金は歩合制ではなく比較的高待遇の固定給制を採用している。

店員は「売ること」を追求する必要がなく、純粋に人々にブランドのよさを伝え喜んでもらうことにフォーカスできる。

デジタル面では、専用アプリでセルフ決済ができ、チャット機能を通じてスタッフに質問できるのが特徴だ。また、店内のレストランにいながら商品を持ってきてもらうこともできる。今後の出店に合わせて、アプリを通じて他店舗から興味のある商品の取り寄せもできるようになる予定だ。

――「コミュニティー作り」に力を入れているようですが、具体的にどんなサポートを行っているのでしょう。

店舗で週2~3回のイベントを実施している。エクササイズ教室、クッキング教室といったレッスンから、カンファレンスやブランドの製品発表会の開催まで多岐にわたっており、「多様なコミュニティー」が形成されやすい環境を提供している。

こうしたイベントやコミュニティーは、顧客にとって「店舗へ足を運ぶモチベーション」を生み出す。また、レストランが店内に併設されているのもポイントで、知り合った人と気軽に食事を楽しむ場を提供していることも「コミュニティー作り」の一助となっている。

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