注目の「集団的自衛権問題」 目から鱗の橋下氏の主張

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大阪都構想実現を目指す橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)は、出直し市長選で勝負に出たが、安倍首相が強い意欲を示す集団的自衛権の憲法解釈変更による行使制限撤廃問題では、反対の姿勢の公明党に対して、みんなの党とともに、維新は賛成の方向だ。
 展開次第で、安倍首相は「自公」から「自維み」へ連立組み替えを選択する可能性もある。

そんな情勢で、橋下市長が集団的自衛権問題について、2月16日発信のブログで独自の見解を披露している。
 これが大変、示唆に富む提言で、「目から鱗」の主張だ。

安倍首相は2月12日、憲法解釈について「最高責任者は私。その上で選挙で審判を受ける」と国会で答弁し、物議を醸したが、橋下氏の主張はこうだ。「僕は集団的自衛権の行使は認めるべきだという立場」「首相の発言は、発言自体問題はない。政府答弁に責任を持つのは首相であって、内閣法制局長官ではない」と述べる。
 その上で「日本国には、法の番人がいない」「日本の仕組みはこの責任のない助言者に事実上の決定権を与える。そして責任を伴わない決定が繰り返される」と指摘し、「内閣の憲法解釈の是非を判断するのは憲法裁判所」だが、日本には存在せず「日本の統治機構、すなわち憲法保障の仕組みがゆがんでいる」と説く。

違憲立法審査権を持つ最高裁は具体的な訴訟事件で憲法適合性を審査する通常裁判所という制度設計で、国の憲法の番人の役割を果たし切っておらず、「普通の裁判所でない憲法裁判所を作るべき」と唱える。

注目すべきは、現行憲法での憲法裁判所設置の成否にも言及している点だ。「憲法81条の解釈から、今の最高裁判所が憲法裁判所のように振舞うことも可能なようだ」としながら、「今の司法の仕組みからして、政治に対峙できる憲法の番人にはなり切れないだろう」「憲法裁判所は憲法に明記すべき」と結論づけている。

維新が強く唱える地方自治システムも含めて、統治機構に歪みや欠陥、経年による金属疲労が見られるのは事実で、憲法のあり方も含めて見直しが必要という橋下市長の理解と主張は正鵠を射ている。
 維新は統治機構改革という原点を座標軸に据えて政界再編を主導すれば、幅広い国民の共感と支持を背負う新政治勢力を結集できるのではないか。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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