安倍首相、内閣改造の「2つの狙い」 隠れた焦点とは何か?

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2014年度予算の3月中の成立が確定した2月28日、安倍首相は今国会(会期末は6月22日)閉会後の内閣改造・自民党役員人事の実施を明らかにした。昔から首相のパワーの維持・拡大には「人事不動」が最善といわれている。現在、入閣適齢の当選5~6回の自民党の衆議院議員は計50人に上るが、与党にはいつもポスト数の何倍もの大臣病患者がいる。だが、人事を行えば、入閣者は首相に感謝するが、外れ組は不平分子となり、一方で交代させられる前任者も、不服から背を向けかねない。結局、人事は味方よりも敵を増やす。それを承知のはずの安倍首相も、「無風政局」で気が緩んだのか、夏の話を始めた。

狙いは2つあると見る。一つは、秋の臨時国会対策だ。6月といわれる集団的自衛権行使の憲法解釈変更の閣議決定の後、臨時国会での関連法案の審議で、この問題が大議論になる。それを見越した「政権強化」で、石破幹事長ら論客の入閣を検討しているのではないか。もう一つは、来年9月の総裁選対策だろう。12年の総裁選は辛うじて逆転勝利だった安倍首相は、好調政権にもかかわらず、「脆弱な党内基盤」への危惧があるに違いない。「選挙に強い」と定評がある菅官房長官の幹事長起用を決断するかもしれない。

だが、隠れた焦点は連立の枠組みをどうするかだ。集団的自衛権問題で公明党とのすき間風が注目を集め、同時に賛成派の日本維新の会やみんなの党との連携も取り沙汰されている。「自公」から「自維み」へ、連立組み替えの大業に出るのか。それとも落とし所は「維み」の政権参加による「自公維み」の4党連立か。

政権強化のつもりが、人事実施で逆に政権が一気に弱体化した例は多い。「1強」を背に、安倍首相は人事を視野に入れるが、消費税増税後の経済変動の下でどうやってアベノミクスの仕上げを図るのか、理念偏重による猛進型の舵取りと急ぎすぎの安倍路線に対する内外からの懸念にどう応えていくのか。夏の話の前に、「春の嵐」に全力で立ち向かう必要がある。柔軟な発想と複眼思考の持ち合わせがあるかどうかが問われている。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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