あの京都から「日本人観光客が減った」深い理由 観光地の魅力減少させる「観光公害」のヤバさ

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また定番の観光名所だけでなく、地元の人々の暮らしを観光対象とする「まちなか」観光の人気が生む問題もある。

市民の生活のための場所だった錦市場が観光化されていく問題や、舞妓パパラッチという形で問題化されている祇園や花街における外国人観光客のマナー違反の問題も、そもそもは「一見さんお断り」で知られる敷居の高さで日本人観光客が遠慮を感じていた祇園界隈に、そんな「敷居の高さ」という感覚を共有しない外国人観光客が押し寄せていることが問題の根本である。これもある種の異文化接触の問題といえるだろう。

いずれにせよ、京都でオーバーツーリズムが問題化し始めた2014年から2016年の間に外国人宿泊客数は3倍も増加していた。このことからも観光客の「質」の変化が京都の地域社会にどれほど大きな影響を与えたかをうかがい知ることができるだろう。

訪日外国人の内訳

では現在、外国人旅行者として日本を訪れているのはどのような人々なのだろうか。現在、訪日外国人の5人に4人はアジア人であり、欧米人は10人に1人ほどである。2018年のデータでは中国(26.9%)、韓国(24.2%)からの旅行者だけで全体の5割を超え、これに台湾(15.3%)、香港(7.1%)を加えると東アジアからの観光客だけで73.5%も占めることとなる。

とくに年々数を増し続ける中国人の存在感は大きく(2008年の訪日中国人は100万人ほどだったが、2018年には約838万人)、「3人に1人は中国人」といってもいいくらいである。彼らこそ日本の外国人観光客急増の原動力といってもよい。

(出所:日本政府観光局〈JINTO〉)

また、今や世界中の海外旅行者の5分の1を占めるといわれ、日本のみならず世界中の観光地に押し寄せ、世界中の観光地にオーバーツーリズムをもたらす「主役」とされることも多い中国人旅行者であるが、ツーリズムの世界でそれだけの存在感を示す現時点でも、パスポートを発給されているのは中国の全人口約14億のうちわずか5%ほどにすぎないという。

中国のパスポート所有者は今後年間1000万単位で増えていくともいわれており、そのポテンシャルは計り知れない。

中井 治郎 社会学者

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なかい じろう / Jiro Nakai

1977年、大阪府生まれ。龍谷大学社会学部卒業、同大学院博士課程修了。京都界隈で延長に延長を重ねた学生時代を過ごし、就職氷河期やリーマンショックを受け流してきた人生再設計第一世代の社会学者。現在は京都の三条通で暮らしながら非常勤講師として母校の龍谷大学などで教鞭を執っている。専攻は観光社会学。京都府美山町や世界遺産・熊野古道をフィールドに、文化遺産の観光資源化と山伏についての研究を行う。

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