会社員が消えた後に「お互い様」で生き残る方法 「多動力」ではなく「他動力」の時代になる?

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左から大竹文雄、稲場圭信、大内伸哉、小川さやかの各氏(写真:サントリー文化財団)
ICTやAIの発達で「会社員」は消え、労働のあり方が変わる。少子高齢化はさらに進んで経済や市場を変え、社会や共同体のありようも変わらざるをえなくなる。そんな不安な時代を私たちはどう生きればいいのか──。4人の異なる分野の研究者が「予定調和なし」で話し合うトークイベントが10月に大阪で開かれた。「利他主義」「オープンなつながり」「無自覚の宗教性」など、さまざまなキーワードが浮かび上がった議論をレポートする。

無縁時代の災害、自営時代の労働

「これからの時代をどう生きるか──宗教×労働×その日暮らし」と題したこのトークイベントは、サントリー文化財団の設立40周年記念事業である「学芸ライヴ」の大阪会場2回目。

前回と同じく経済学者の大竹文雄氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)が司会進行を務め、宗教社会学者の稲場圭信氏(大阪大学大学院人間科学研究科教授)、法学者の大内伸哉氏(神戸大学大学院法学研究科教授)、文化人類学者の小川さやか氏(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)の3人が集まった。

ICTやAIの急速な発達と普及により、仕事の内容はもちろん、会社や雇用の形も変わり、労働のあり方や意義まで根本的に問い直される。少子高齢化が進み、老後が長くなると、医療や介護の重要性が増し、市場や経済の動き、さらには社会や人間関係も変わってくる。

例えば、共同体内での取引や利他主義など、非市場的な関わりが重要になっていくのではないか。大竹氏のそんな問題提起を受け、各論者が自身の研究と問題意識を説明するところから議論は始まった。

稲場氏は、東日本大震災や熊本地震、西日本や九州北部の豪雨など、近年の災害で避難所になった寺や神社を回り、支援策と共助のあり方を探ってきた。「少子高齢化などで家族構造の変化が急激に進み、現在は3割弱が単独世帯。2030年には4割になる。家族や家という形での日本社会はもうない」という無縁社会の中、30年以内に南海トラフ地震がほぼ確実に起こる。

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