JR西日本はなぜ「天皇」井手正敬と決別したか 新幹線「台車トラブル」と福知山線脱線事故

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尼崎のJR脱線事故現場を訪れ、犠牲者の冥福を祈る井手正敬氏(写真:共同通信)
亀裂の長さが14cmにも達し、あと3cmで台車枠が破断するという極めて深刻なものだった、2017年12月11日に起きた新幹線「のぞみ34号」の台車亀裂トラブル。乗客と運転士107人が死亡、562人が重軽傷を負った2005年4月25日のJR福知山線脱線事故から13年間で何が変わり、何が変わらなかったのか。
遺族と加害企業トップという相反する立場の2人が、鉄道の安全性確立をめぐって「共闘」する姿を描いた『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』の著者が、2つのインシデントと事故を対比しつつ、その淵源を探る。

「個人のエラー」か「組織事故」か

「事故において会社の責任、組織の責任なんていうものはない。そんなのはまやかしです。個人の責任を追及するしかないんですよ」

『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

約20年前にJR西日本の社長を務め、社内で「天皇」と恐れられた辣腕の元カリスマ経営者、井手正敬氏が、私に語った言葉である。

一方、現在の来島達夫社長は「目指すリーダー像なんて考えたり、人前で語ったりしたことがない」と言う物腰柔らかな人物。事故防止の取り組みをこう語った。

「全社を挙げてリスクアセスメントに取り組んでいますが、職種やエリアが多岐にわたることもあり、本当に定着しているかと言えば、まだまだそうではない」

JR西日本が、昨年12月の新幹線重大インシデントを受けて新年度からいくつかの再発防止策を打ち出したというニュースを見ながら、私は『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社)の取材過程で聞いた、新旧2人のトップの言葉を思い出した。

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