会社員が消えた後に「お互い様」で生き残る方法 「多動力」ではなく「他動力」の時代になる?

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さらに先には、「働かなくていい時代」が来るかもしれない。そう論じたうえで、大内氏はこう問題提起した。

「環境意識の高まり、消費行動の変化、欲望の変質などで、生産力増強への懐疑が広がっている。資本主義社会や労働のあり方が変わると、人間はどうやって生存するかというところに戻っていく。リアルな共同体において、利他主義的な『お互い様』志向が高まるのか、それとも、排外的凶暴性が表面化し、絶滅への絶望的な戦いになるか」

タンザニアに見るオルタナティブな社会

もう1人、小川氏はアフリカ・タンザニア社会の研究から、贈与や分配システムを考える。

小川さやか(おがわ・さやか)/1978年、愛知県生まれ。国立民族学博物館研究戦略センター助教などを経て、現在、立命館大学先端総合学術研究科教授。博士(地域研究)。著書に『都市を生きぬくための狡知』(世界思想社、サントリー学芸賞)、『「その日暮らし」の人類学』(光文社新書)、『チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社)など(写真:サントリー文化財団)

路上商人たちの「騙し騙され、助け合う」商慣行、1つの職や人間関係に縛られない「その日暮らし」の方法を調査してきた。最新の著書『チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社)では、一獲千金を夢見て香港に渡ったタンザニア人たちが、シェアリング経済や地下銀行を通じてセーフティーネットを作っていることを明らかにした。

いずれも、市場交換や競争原理、富の再分配といった資本主義国家のシステムとは異なる価値観で動いている。

タンザニア人たちは、取引や売買にネットオークションやSNSを駆使するが、「信用スコアや格付けのような評価の仕組みは使わず、その時々の状況で信頼する相手や取引の相手を変える」という。

小川氏は、これを「釣り堀にいろんなものを投げ込んで、応答する人を待つような方法」と表現する。固定的な関係に縛られない分、不確実・不安定で、時に裏切られたりもするが、日本社会のように「期待に応えねば」という重圧や、期待どおりにいかないと不満や負い目が生じたりする息苦しさはない。

「タンザニアと日本、どちらのシステムが優れているということではない」と断ったうえで、小川氏はこう提案した。「計画的な生き方とその日暮らしの生き方、絆や共同体の互助とプラットフォーム型の緩やかな互助をバランスよく組み合わせていけないか。現在の日本のように確実性や安定性を目指す世界観が加速的に進む状況では、不確実性が持っている豊かさを考えてみてもいいと思う」。

オルタナティブな社会像を示す小川氏の報告に、論者と会場から意見や質問が相次いだ。「オープンで緩いソーシャル・キャピタル(人々の信頼や結び付き)は、自営業の時代に合うと思うが、なぜそういう社会が可能になったのか」「ICTなどの新しい技術をうまく使い、資本主義的な発展過程を経ていない分、結果的にいちばん先を行っている」「釣り堀型コミュニケーションが成り立つのは、呼びかけに応える“responsibility=応答責任”の意識が強いからではないか」……。

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