転職で「後悔する人」「満足する人」の決定的な差 「昇進」や「成長」が目的の転職には要注意

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もし転職希望者が「今の仕事に飽きたから新しいことをやりたい」と思っているとすれば、まさに今こそが能力定着のタイミングである可能性もあるということです。これまで頑張ってきた時間の長さに比べれば、あともうほんの少しだけの辛抱で、長く通用する能力が手に入るのです。

ある瞬間「わかった」だけではダメで、定着して再現できるようになるまでやらなければいけません。多くの人はここで我慢できず次に移ってしまうので、1度できたことが再現できないのです。逆に1度自動化するまで定着した能力はなかなか消えません。何年も自転車に乗らなくても、1度覚えた乗り方を忘れる人はほとんどいないでしょう。

転職理由が「人間関係」「給与」でもいい

「昇進間近ではないか」「能力定着間近ではないか」、この2つのチェックポイントで問題がなければ、転職に踏み切っていいと思います。時折、「人間関係」や「給与」を理由に転職したことを後ろめたく感じる人を見かけますが、決して悪いことではありません。

前回記事でも紹介したように、職場の人間関係は、配属先の居心地やパフォーマンスに大きく影響します。相性の悪い上司や同僚と我慢して一緒に仕事をするぐらいなら、相性のいいところで余計なことを考えず伸び伸び頑張るのもよいのではないでしょうか。

また、給与水準は業界や会社の利益率などである程度決まり、個人の努力ではどうしようもないところもあります。ですから、給与への不満がどうしてもあるなら、もっと水準の高い業界や会社への転職もありでしょう。

以上、転職を希望する動機を中心に、その転職はよいのかどうかを考えてきました。一応、よい場合と悪い場合を挙げてはみましたが、究極的には転職はしないに越したことはないと実は思っています。

理由は単純で、今の会社がどうであれ、新しい会社で活躍するのだって結構、難易度が高いことだからです。「隣の芝生は青い」で、よく見えているだけのこともありますし、実際いい会社だったとしても、新しい環境や文化に適応するだけでも大変なことです。それをわかったうえで何らかの理由であえて転職するというなら、それもまたよし、でしょう。

最終的には覚悟の問題かもしれません。それでも、転職はくれぐれも慎重に!

曽和 利光 人材研究所 社長

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そわ としみつ / Toshimitsu Sowa

株式会社人材研究所 代表取締役社長、組織人事コンサルタント

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。現在、人々の可能性を開花させる場や組織を作るために、大企業から中小・ベンチャー企業まで幅広い顧客に対して諸事業を展開中。著書等:『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』(東洋経済新報社、共著)など。

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