日本の「クラフトビール」実態がわからない事情 そもそもクラフトビールってなんだ?

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時代によってものの捉え方は移り変わっていきますし、1度決めた定義を後生大事に守っていくことで活動が窮屈になってしまうのであれば本末転倒でしょう。随時見直すことは大事なのですが、条件の変更は団体に属する有力な会員が定義に合わなくなって脱退するのを避けるため、とも言われており、いろいろと大人の事情も見え隠れしています。

アメリカには定義があると言うけれども、クラフトビールは決して不変のものではなく時代とともに変わり続けているわけです。

大手醸造所がクラフトと名乗っても問題ない

BAに加盟する醸造家が醸造したビールが一般にクラフトビールと呼ばれるものではありますが、少々ややこしい話もあります。興味深い事例をご紹介致しましょう。

2015年の「クラフト」という言葉の使用に関する裁判についてです。BAの定義に合わない大手であるミラークアーズ社傘下のブランド「ブルームーン」がパッケージに“Craft beer” や“Artfully Crafted”という言葉を使っていたことに対して虚偽であると訴えた事件がありました。

このとき同社は、「『クラフトビール』などの表現を使用することで消費者の誤認誘導となることはない。『クラフトビール』の定義は広く一般に受け入れられていないからだ」と主張。訴えた側はBAのクラフトブルワーの定義を援用して主張したものの今回の争点については認められず、原告の訴えは棄却されました。大手の醸造所がクラフトという言葉を使うことを禁止する法律は一切ないと連邦裁判所が判断したということです。

一民間団体の決めたことであって、アメリカの連邦裁判所は法律にのっとってこれを否定しました。国は定義していないし、そこにコミットしないのです。個々人が自由に考えればいいし、民間団体の定義に従わなくてならない、ということでもないということです。

別の問題もあります。近年大手ビール会社が自社ビールの販売量が低迷する中、テコ入れのために中小のビール会社を積極的に買収しています。その買収によってBAの定義ではクラフトブルワーではなくなったところがたくさん出てきています。

親会社が変わっただけで、そのビールがまずくなったわけでも廃番になったわけでもありません。今も変わらず醸造し、同じ名前のビールを販売しているのですが、「今日をもって買収されましたので明日からクラフトブルワーではなくなります。そういうことなので、よろしく」と言われてファンは納得できるのか?という疑問も残るわけなのです。

発祥の国アメリカと言えども、定義も変わるし言葉に込められた人の思いもさまざまです。クラフトというものはなかなか難しい。

では、BAは何をしているのでしょうか? 定義するメリットとは何か?と言い換えてもいいでしょう。実は産業全体の発展を助ける大きな役割を担っています。

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