日本の「クラフトビール」実態がわからない事情

そもそもクラフトビールってなんだ?

BAは加盟しているブルワーから吸い上げたデータをまとめ、会報誌にして配布しています。会員であればウェブ版も利用できます。各州の醸造所の数や雇用の状況、納めている税額、全米および各州の傾向などさまざまな視点でまとめられており、非常に有用な資料です。これを自社のマーケティングや製造計画などに生かしているのです。

また、そのデータを基にBAは政治団体としても広く活動しています。例えば小規模事業者向けの減税措置法案可決に尽力し、それに関わる各州の政治家をサポートしています。

クラフトビールはアメリカ国内で依然消費で伸びてはいるものの、その成長は以前に比べて鈍化していると言われており、今後国内需要を劇的に伸ばしていくことは容易ではありません。そこで輸出促進プログラムにも力を入れており、政府機関と連携し海外プロモーション活動も熱心に行っています。

日本におけるクラフビールの定義は?

ビール全体で見ると、アメリカ市場は大手のラガーがいまだシェアの多数を占めていますが、BAによる活動もあってか現在クラフトのシェアは金額ベースで20%を超えるところまできました。輸出も伸びています。

また、アメリカ国内のビール醸造所は2018年末の段階で7000軒を超え、数年以内に9000軒まで増えそうです。アメリカのクラフトビールシーンは緩やかながらも拡大基調で、それは今後も続いていくことでしょう。

ここで大事なのは、クラフトを個々人の情緒的な思い入れの部分と産業における統計を取るための客観的指標の2つに明確に分けて考えるという視点です。前者は人それぞれで定義できないけれども、後者は数値などで定義することができます。

定義し区別して統計を取ることは、「過去を整理し、今を把握し、未来を予想可能にすること」です。定義をしたことによって取れるようになったデータが存在するからこそ上記に挙げた活動は可能になりました。クラフトブルワーを定義し区別してシーンを可視化することはビール産業をアップデートすることであり、現状それは大成功していると言っていいと思います。

それでは、日本はどうでしょうか? 一般的に「日本にクラフトビールの定義はない」とされ、現在日本のビール会社はそれぞれ独自の解釈を示しています。「小規模」「伝統的な製法」「個性」「地域密着」「職人のこだわり」などその表現もさまざまです。

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