「なんだか生きづらい人」は白黒つけすぎている 「できそう」という見込み感が大事なワケ

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矢野さんははじめ、Dの「(5)幸運にも恵まれて、最高にうまくいった」ときの未来像を選択しました。けれども「私はDという人生を選択した!」と宣言してもらったところ、「こうなったら最高ですけど、ちょっと違和感を覚える」とのこと。「年収1000万円で、次期社長候補」は無理かもしれないという気持ちがぬぐえなかったのです。

そこで矢野さんは、改めてCを選び、同じように宣言したところ今度は違和感がなく、スッと受け入れられました。「これなら実現できそうな感じがした」そうです。

「これならできそう」という見込み感が第一歩

この「できそう」という感覚がとても大切です。最後に宣言するのは、自分がどう感じるのか、自分の本心を確認するため。そこで矢野さんのように「実現できそう」とスッと受け入れられるものを選びましょう。

白黒思考改善療法の(7)で「できそう」という感覚(見込み感)を大切にしてもらったのは、それが前向きな行動を起こすモチベーションにつながるからです。この見込み感のことを「セルフ・エフィカシー」といいます。

セルフ・エフィカシーとは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した心理学用語で、日本語では「自己効力感」などと訳されます。人がある行動を起こそうとするとき、セルフ・エフィカシーを強く感じていると、その行動を行う可能性が高まるのです。

例えば、現在の職場に不満があり、転職をしたいと思っていても、「転職してもうまくいかないかも」と思っていたらなかなか行動には移せません。反対に「転職したら自分の力が発揮できそう」「待遇がよくなりそう」と思えたら、採用情報を調べたり、応募したり、転職に向けた行動を起こしやすくなります。

早稲田大学の岡浩一朗教授のチームが、20~70歳代の約2000人を対象に、ウォーキングについて調べた研究でも、「やってみる」「続ける」「やめる」という行動を左右するのは、セルフ・エフィカシーであることがわかったという結果が出ています。(日本経済新聞、2012年6月5日)

「これならできそう」「できるかも」と思える解決像がイメージできれば、人は行動を起こしやすくなりますし、失敗や困難があっても諦めにくくなります。さらに行動を起こした結果、うまくいけば、それが成功体験となり新たな行動につながります。

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なぜなら、セルフ・エフィカシーは成功体験によって高まるからです。成功体験を積み重ねることで、「自分ならできる」という気持ちが強くなり、さらに高い目標に向かって行動を起こすこともできるようになります。そして、それがさらに成功体験につながり、好循環が生まれます。

ただ、白黒思考改善療法を行ったからといって、すぐに行動を起こさなければいけないかというと、そうではありません。「できそう」という前向きな気持ちが持てたら、それだけでOKです。行動を起こすための準備体操だと思ってください。

また中には、ワークの(7)で、A(「今のまま、それをしないでいた」場合)がしっくりくる人や、どの選択肢にも違和感を感じるという人もいるでしょう。それは、まだ行動を起こすタイミングではないということかもしれません。

そういう場合は、白や黒だけではなく、「自分にはたくさんの選択可能な未来がある」ということがわかるだけで十分です。それが安心感へとつながるはずです。

<プロフィール>
前田泰章(まえだ やすあき)
/問題解決型カウンセラー。1976年生まれ。埼玉県出身。日本体育大学卒。ファミリーレストラン店長、キャリアコンサルタント、中学校教諭を経て心理療法に出あい、埼玉県川越市に「心のストレッチルーム」を開業。カウンセリングとさまざまな心理療法のメソッドを組み合わせた「問題解決型カウンセリング」を開発・実践している。通常なら1年以上、通院が必要となるケースでも半年間で快方に向かうなど、多くのクライエント(相談者)から高評価を得ている。著書に『「なんとなく生きづらい」がフッとなくなるノート』(クロスメディア・パブリッシング)。心のストレッチルームHP http://www.kokoro-str.jp/
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