「ファクト」「エビデンス」至上主義者の末路 「昨年の正解」が「来年の正解」とは限らない
彼らはこうして、限りある資源を有効活用できるような、より費用対効果の高い貧困撲滅の方法論を発見し、広めていきました。下記がその一例です。
・成人の食生活を変えようと金銭的な援助をしても、彼らの食習慣は簡単には変わらず、効果は薄い。一方、子どもや妊婦に直接的に食料援助することは劇的な効果が見込める
・水を殺菌する塩素と、塩と砂糖を安価に提供するだけで、下痢で死ぬ子どもは劇的に減る。病院に来てから点滴をするような対応は、費用対効果が低い
ここでのポイントは、普遍性(より専門的な用語でいえば外部妥当性)を高めるために、複数の地域にまたがってそうした実験を行った点です。例えば、アフリカで有効だった方法論がインドでは効かなかったら、その手法の効果は減じます。
もちろん、完全に同じ効果が生まれることはほぼないでしょうが、それでも極力その普遍性を高めようとした点がカギだったのです。学者としては当然とはいえ、誠実なアプローチと言えるでしょう。
ファクト・エビデンスの弱点
このように、適切に用いればより正しい意思決定や行動につながり、非常にパワーを発揮するファクト・エビデンスですが、弱点もあります。
また、それに過度にこだわりすぎる「ファクト・エビデンス至上主義」は時として好ましくない結果をもたらすこともあります。
今回はそれについてご紹介します(何事も「至上主義」はあまりよい結果をもたらさないものではありますが)。
ファクト・エビデンスの典型的な弱点としては以下の2つがあります。
多くの場合、去年通用したことは今年も通用するものです。
例えば、昨年まで新卒採用でA大学、B大学、C大学出身者のパフォーマンスがよかったのに、今年急にその傾向が消えてしまうということはないでしょう。
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