「ファクト」「エビデンス」至上主義者の末路 「昨年の正解」が「来年の正解」とは限らない
ノーベル賞でも重視された「エビデンス」
ビジネスに限らず、ファクトやエビデンスをベースに意思決定や制度設計を行うことが最近強調されるようになっています。
先日発表された2019年のノーベル経済学賞もまさにその点が評価されました。
受賞者であるアビジット・バナジー、エステール・デュフロ、マイケル・クレマーの3氏は、最貧国の貧困撲滅という、個人的な立ち位置や思想信条などから「べき論」が横行しやすい分野において、具体的なエビデンスに基づいて貧困撲滅に効果的な手段を見いだす方法論を開発しました。
彼らが用いたのはRCT(Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)と呼ばれる手法で、元々医薬品開発などで用いられてきたものです。
RCTでは、「それ以外の条件はほぼ同じである、比較対象できるサンプル群」を作り、ある要素だけ変えてどのような差異が生じるかを観察し、それをエビデンスとします。
例えばAという群には避妊具を無償配布し、Bという群にはなにもしなかったとします。
その結果、A群とB群で10代女性の妊娠率やHIV感染率に大きな差がなかったとしたら、「避妊具を無償配布することは10代女性の妊娠抑制やHIV防止にはあまり効果がない」ということがわかるのです。まさに医薬品の効果を検証するプラシーボ(偽薬)実験に似ています。
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