「勉強しない」と決めることがやる気への第一歩 「スイッチ」ではなく「すごろく」で動く
このことから白澤さんは、やる気のなさそうに見える生徒や学生には、無理に積極的な授業参加や努力を求めるのではなく、いったんは逃げることを認めてあげることが有効なのではないかと訴える。
「逃げてもいいから、イヤイヤでもいいから」などとまずは回避行動を認めたうえで、「最低限これだけは暗記しよう」などと成果の表れやすい努力を促すことが、好循環に入るきっかけになるかもしれないと提唱する。
ただし「無理やり詰め込もうとすると、回避行動が強くなってしまうので、学習行動を学習させることに意識を向けるといい」とのこと。具体的には、小テストで10点満点中2点でも、ほんの少しでも学習行動をしたのならば、「ほら、やったから2点とれたよね」という部分に焦点を当てると獲得行動が増える可能性がある。つまり小さな成功体験を演出し、積み上げてあげることが大切なのだ。
さらに、「完了志向」から「成長志向」へと移行するには、「外在化手法」が有効ではないかと白澤さんは言う。
回避行動をとってしまう生徒を変えようとするのではなく、生徒に回避行動をとらせてしまう要因を「ウイルス」や「妖怪」のようなものだと想定し、それを無力化する方法を具体・個別に考えるのだ。例えば「(授業で)難しい内容が15分以上続くと"放心ウイルス"が活性化する」などと分析し、「難しい内容は10分以内にまとめる」などの方策を発想する。
やる気なんてなくていいからやってみよう!
「調査の結果から、"やる気"というのは、単なる"状態"だと、私は思うようになりました。意志をもっていて、行動できていて、プラスのフィードバックが得られている状態にあることを"やる気がある"といっているだけです。本人の意思で出したり、誰かの働きかけで出させたりするようなものではありません。
そこを理解してやらないと、子どもを余計に苦しめることになりかねません。『やる気って状態だから、自分で出そうと思っても出るもんじゃないよ。やる気なんてなくていいから、やっつけ仕事でもいいから、ちょっとやってみよう』と働きかけるほうが効果的です」
現在、白澤さんは教育ベンチャーと協力して、全国の学校をまわって同様の調査を行いながら、これまでの調査結果からわかったことを現場の教師たちに共有する講演も行っている。白澤さんはこうも証言する。
「このようなメカニズムを知ると、これまで『あいつ、やる気がないなあ』と嘆いたり、つい生徒の態度を責めたりしてしまいがちだったちする教師たちが、『どうやって獲得行動を増やせるか』と発想するように変わります」
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