「勉強しない」と決めることがやる気への第一歩 「スイッチ」ではなく「すごろく」で動く

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数学・英語・国語の3教科の成績と、4分類の関係を見ると、回避行動の多い「完了志向」「防衛志向」の生徒は数学の成績が低いことがわかった。

「数学は単元が明確に切り替わり、毎回が学び直しになるからだろう」と白澤さんは分析している。英語に関しては「完了志向」でも成績はそれほど下がらない。国語は4分類による差がほとんどない。「英語や国語の場合、それまでの学習の貯金が大きいからでしょう」と白澤さん。

白澤さんは、日ごろ大人たちから受けている「声がけ」が生徒たちに暗示をかけ、主体性を左右している可能性を指摘する。「どうせ無理だよ」「君はその程度だよね」という言葉を頻繁にかけられていると感じている生徒は「完了志向」に最も多い。それ以上に「どうせ無理だよ」というような言葉を日常的にかけられていると感じている生徒が全体で約3割弱にも上ったという結果に白澤さんは驚きを隠せない。

「大人はきっと、悪気なく無意識にそういうことをつい言ってしまうんでしょうね。気をつけてほしいと思います」

また、ある学校の調査で、特定の学年で「成長志向」の割合が急激に減り、代わりに「防衛志向」が激増するという現象が確認された。短期間の間に何があったのかを調べてみると、学校として新学年でのクラスが学力順に決まるクラス分けテストを行っていたことがわかった。

序列化され、下位に位置してしまった生徒たちが回避行動を増やした可能性が考えられる。同様に、大学生を対象にした調査では、自己効力感が下がると獲得行動が減少し、回避行動が増える傾向も見えてきている。

一気にゴールできない「やる気すごろく」

では、どうしたら「成長志向」の状態に導くことができるのか。大学生を対象にした小規模な追跡調査の結果、「努力をした結果として成績が伸びる」というよりも「成績が上がった結果として努力するようになる」と表現するほうがふさわしいとわかった。勉強を頑張ってもすぐに成績が上がるわけではない。しかし前の学期の成績がいいと、次の学期の学習における獲得行動が増えることがわかったのだ。

さらに、主体性の変化には明らかなパターンがあることがわかった。半年間という期間では、「防衛志向」の学生がいきなり「成長志向」に変わることはなかった。「参加志向」の学生が「成長志向」に変わることもなかった。「防衛志向」の学生は必ず一度「完了志向」の状態に移行してから「成長志向」に移行するようなのだ。

さらにいえば、「参加志向」になってしまった学生は、回避行動を増やして「防衛志向」の状態になってからでないと、それ以上の変化が見込めない。

一気にやる気が出るスイッチなど存在せず、いちど「振り出し」に戻り1マスずつ進む必要がある。いわば「やる気すごろく」だ(図参照)。

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