国語で道徳を教えるな「国語よ、ロックであれ」

ブレイディみかこ×新井紀子「国語」を語る

新井:情報が氾濫している中で答えを見つけるとき、AIは多数決で決めますが、それは生きていく指針にはなりません。不確実性を生きるためのオリジナリティーって何かといえば、結局のところ、それはリアルな体験に基づくリアルな考えです。だから、自分の現実に接続した情報処理をするためには、つまり、自分が体験したことを正しく理解するためには、意味がわかって読めるということが最も重要だろうと思うんです。

だから、私はリーディングテストを通じて、リアリティーのある読み方が、最初に自分を支えてくれる基盤になることを伝えたいと思っているんです。

リアルなことをリアルに感じることができる大前提は、現実を直視する能力があることです。ですから、若い世代の人たちには、現実を直視してほしいと思います。暑い寒いに始まって、快不快も含め、それをリアルに受けとめられることができて初めて何が不満なのかを口にすることができます。

ブラック企業で働いているのに、みんながやっているんだから自分も寝ずに働いてしまうようなことは、やはりリアルが欠けている、現実を直視できていない状態だと思います。

ロックのいいところは、おかしいことをおかしいと言えるとこですよね。日本人は周りのみんながそうしていると、自分の快不快には目を瞑り、「普通」という言葉で全部を内面化させてしまいますよね。暴力も理不尽もすべて内面化させてしまう。でもロックはそうじゃない。スミスだってオアシスだって、「ばかやろう」って叫びますよね。ところが、最近の若い人が作る曲はほとんど、「頑張ろう」なんです。

おかしいことをおかしいと言える力

ブレイディ:そうなの。何を頑張るんですか。

新井:それが、すごく抽象的に「頑張ろう」なんです、全体的に。これ以上、どう頑張れっていうのかっていう状況なのに、「頑張ろう」になっちゃって、自己責任じゃなく社会に対して声をあげるっていうのがないんです。それは、自分の置かれた状況を見つめること自体ができない状況だということで、不健全ですね。

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ブレイディ:つまり、リーディングスキルって、リアルな読み方ができることなんですね。世の中や自分の置かれた状況を直視できる力。

新井:「頑張ろう」って、たぶん、小学校、中学校の国語からきているんですよ。日本の国語は大体道徳だから。だから、『走れメロス』なんです。頑張るから。

ブレイディ:国語を道徳にしちゃ、現実は見つめられませんね。国語はロックじゃなきゃいけない。

新井:それいいですね。国語よ、ロックであれ。そうすれば、不確実性の時代を生き抜くためのリーディングスキルが身に付きますよ。

(構成:岩本宣明)

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